足指の手術

 

患者さんの声

大島和子さん 67歳(手術時)、女性、関節リウマチ

2011年に関節リウマチを発症し、その数ヶ月後からレミケード®による治療を受けてきました。しかし次第に左足指の変形が進み、歩行時の痛みが強くなってきました。そんな折、新聞で東京女子医大膠原病リウマチ痛風センターのことを知り、リウマチに対する手術の症例が全国でもっとも多く、優れた病院だと掲載されているのを読みました。

昨年、外来ではじめて猪狩先生の診察を受け、すぐに手術していただいて本当にラッキーでした。今ではリウマチにかかる前とほぼ同じ生活が出来るようになり、運動もしています。どんどん変形していく足をみて、正直将来に不安を感じて暗い気分でしたが、今では左足も綺麗になり大変感謝しています。(2015.3.6)

 

足指の変形

リウマチ白書2010によると関節リウマチの患者さんの約2割が足指や足の裏の痛みから関節リウマチを発症し、7割以上の方が靴で悩んでいらっしゃいます(リウマチ友の会会員8307人中6408人)。また足の痛みを特に治療せずに諦めていると答えた方も1割近くいらっしゃいました。多くの方が足の変形や痛みに困っていることがうかがえます。リウマチの方の足の特徴は、足首(足関節)や踵周囲(後足部)の変形、外反母趾や足指の脱臼など変形、そしてそれらに伴う痛みや胼胝(タコ)の形成です。私たちはこのようなリウマチ足に対し、圧を分散するような靴を推奨し、踏み込めるように装具療法やリハビリの指導を充分に行います。それでも歩くと足首や足の裏が痛い、足指が靴にあたったり引っかかったりして靴が履きにくいなど場合には積極的に手術をお勧めし、多くの患者さんにご満足いただいています。足でお悩みの患者さんは当センター整形外科担当医にご相談ください。

 

外反母趾の原因
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母趾(親指)の付け根の関節に滑膜炎が生じると、この関節を破壊し、関節が緩んだ結果変形が始まります。母趾(親指)には様々な筋肉・靱帯が付着しており、一度変形が始まってしまうと筋肉や靱帯に引っ張られてどんどん変形が進行するという悪循環となり、外反母趾になります。

 

 

母趾以外の指の変形の原因

foot2母趾(親指)と同様に指の付け根の関節に滑膜炎が生じると変形が始まります。変形が進行すると指の付け根が脱臼し、外反母趾とは違い指先が上(地面から離れる方向)に持ち上がってきます。その結果中足骨の末端に圧がかかるようになり胼胝(タコ)ができてしまいます。また、山型に変形した第2関節が靴などに擦れてしまい胼胝(タコ)ができてしまいます。
胼胝(タコ)を自分で削っている患者さんをよく見かけますが、これは出来ればやめてください。関節の脱臼が胼胝(タコ)の原因のため、これを治さない限り胼胝(タコ)は治りません。また傷口からバイ菌が入り、化膿してしまうこともあります。

 

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手術の流れ

患者さんの足の変形の程度により、いくつかの方法を組み合わせて手術します。また手術を待っている間に関節破壊や変形が進行した場合は、術前外来や入院時に判断して手術予約時にご説明した予定とは違う方法で手術を行うこともあります。

上:手術前、中:手術後、下:レントゲン(手術前、手術直後、手術後数ヶ月) foot3foot4foot5

 

母趾の手術

1. 中足骨骨切り術

中足骨を切って、外反母趾を矯正する方法です。切った骨は適切な方向・角度に移動させ、鋼線(針金)やスクリュー(ネジ)などで固定します。骨をずらすだけであり関節は残りますので、関節温存手術とも呼ばれます。数多くの関節温存手術が知られていますが、主に当センターで考案した第1中足骨近位回旋楔状骨切り術(下図)を選択しています。

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2. 切除関節形成術

数年前までリウマチ足に対する手術の主流とされた手術法で、中足骨の末端を切除します。近年では関節の破壊が重度の場合に適応としています。こうすることで痛みが消え、外反母趾も矯正されます。踏ん張りが弱くなり、足も少しだけ小さくなりますが、日常生活には大きな影響はありません。

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3. 関節固定術

同様に関節の破壊が重度の場合に適応となります。中足骨と足指の骨を一部切った後、鋼線(針金)やスクリュー(ネジ)などで固定します。この関節は動かなくなりますが、痛みがとれ、外反母趾は矯正されます。つま先足立ちができにくくなりますが、切除関節形成術に比べると踏み返しは強く、日常生活には大きな影響ありません。

4. 人工関節置換術

同様に関節の破壊が重度の場合に適応となります。破壊された関節を一部切りとり、人工物(シリコン製)に置き換えます。痛みがとれ、外反母趾も矯正されるだけでなく、関節の動きも残せます。ただし人工物の破損や細菌感染の危険性があります。

 

母趾以外の指(2-5指)の手術

手術する足の指の本数は変形の程度によって異なります。1本だけという患者さんもいれば4本すべてという患者さんもいます。

1. 中足骨短縮骨切り術

中足骨の一部を竹輪状に切りとり、短縮させて鋼線(針金)で固定します。そうすることで足の指の付け根で生じていた脱臼を治します。なお固定に使用する鋼線(針金)は足の指先から外に出ている状態になります。この鋼線(針金)は手術後3週間ほどで抜去します。

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2. 切除関節形成術

関節の破壊が重度の場合に適応となります。中足骨の末端を切除してしまいます。これにより指先の変形が改善し、タコも徐々に消失していきます。なお、手術中に指先の不安定性(グラグラ感)が残る場合は鋼線(針金)で固定し、鋼線(針金)は足の指先から外に出ている状態になります。この鋼線(針金)は手術後3週間ほどで抜去します。

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手術後の処置

1. 入院中

手術部位はあくまで切った骨を鋼線(針金)で固定しているだけなので、つま先足立ちをしたり、何かの拍子につま先で踏ん張ったりすると骨がずれてしまいます。前側に体重をかけない踵(かかと)歩行によって骨がずれるのを予防して頂きますが、その際かかと歩行に適した専用の医療用サンダルを履いていただいています。歩行は手術翌日より開始しますが、はじめは歩きづらいため、理学療法士とともに練習をしていただきます。 また傷が落ち着き次第(手術後約2-3週)、再発予防のための装具を装着していただきます。その装具は入院中に型取りを行い、入院中または外来にてお渡しする予定です。

入院中は傷の処置を週に1~2回行います。抜糸は手術後約2週間で行います。ビニールなどで包んで手術した足を濡らさなければシャワーを浴びることも可能です。

手術後の合併症の有無を調べるために定期的に血液検査を行います。また手術部位のチェックのためにレントゲン撮影を何度か行います。

2. 退院時

手術後約1-2週間で退院となります。手術した足は包帯固定をして、かかと歩行用の医療用サンダルを履いて退院していただきます。手術した足をビニールなどで包んで濡らさなければシャワー浴も可能です。

3. 退院後最初の外来受診(手術後約2-3週頃)

かかと歩行用の医療用サンダルで来院してください。足を固定していた包帯を外し、術後2週で抜糸(抜糸前に退院した場合)、術後3週で指先から突出している鋼線(針金)を抜きます。鋼線の抜去は違和感はありますが、痛みをほとんど伴わないため麻酔は不要です。入院中に作成した装具もこの時期から着用していただきます。また数日後から手術した足も濡らせるようになり、シャワー・入浴も可能となります。

全治までの期間

足の手術の場合、傷がくっ付いて抜糸できるまで手術後2週間、切った骨同士が癒合するのに8週間以上、腫れが引くのに8〜12週間、そしてつま先足立ちなど指先に負荷をかけていいのが12週間といわれています。つまり手術後3カ月程度で全治する予定です。胼胝(タコ)はその頃までには自然に脱落します。

足の中に残っている鋼線(針金)について

足の中に残ったままでも体にはほとんど影響はありません。金属が体内にあると行えないMRI検査も、足そのものをMRI検査するのでなければ問題ありません。つまり頭・腰・膝などのMRIは問題なく行えます。
一方で、体内に金属が入っているのが不快な場合や、皮膚の中に埋まった鋼線(針金)が靴を履くと当たって気になる場合などは抜去することもできます。ただし切った骨を固定するために鋼線(針金)を入れているため、骨が完全にくっついた後に抜去します。一般的には手術後6カ月から1年で抜去のための手術を行います。その際も2泊3日程度の入院は必要ですが、手術翌日から普通に歩くことはできます。

文責 矢野紘一郎
2016年3月16日改筆