東京女子医科大学病院 膠原病リウマチ痛風センター
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母指CM関節とは

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母指、すなわち親指は手の機能に非常に重要です。母指は3つの関節から構成されますが、親指の動きに特に重要な働きをしているのが「付け根」の関節、すなわち手関節に近い部分にある手根中手関節であり、略称として一般にCM関節と呼ばれます。

母指CM関節は大菱形骨という凹んだ骨の上に中手骨が乗っている構造をしていますが、大菱形骨はまるで乗馬に使う「鞍」のような形をしているので、鞍上(あんじょう)関節と呼ばれます。この独特なかたちにより、親指の広い範囲の動きが可能となります。リウマチの進行とともに障害されることが少なくない関節ですが、リウマチでない方でも、軟骨が減って変形を生じてくる「変形性関節症」がしばしば生じます。やや女性に多く、特に閉経後に頻度が増えると言われています。

 

母指CM関節が障害されると...

瓶の蓋が開けづらい、物をつまむと親指の付け根が痛い、親指が開きにくい、親指の付け根が出っ張て来た等の症状はありますか?

母指CM関節が障害されると痛みや腫れ、不安定性などが出現します。特につまみ動作などで痛みが強く感じるようになったり、進行すると親指を開くことが困難になることもあります。親指は手の動作においてとても重要な指ですので、その他の色々な日常生活動作にも障害が出ます。また、CM関節周囲の靭帯が侵されてくると、スワンネック変形という独特の変形が徐々に生じてくる場合があります。

診断は症状やレントゲン画像などから行いますが、レントゲン画像上の軟骨変性・変形の進行と実際の症状は必ずしも一致しない場合があることが分かっており、診断には手の診察経験が豊富な医師の判断が必要な場合もあります。

 

治療

治療は、初期の段階では消炎鎮痛薬、安静を保つための装具、関節内へのステロイド注射などが中心となります。それらの治療を行っても症状が改善せず、手の作業や日常生活・趣味上の制限が強い場合、あるいは変形が強く不便を感じたり、外観が気になる場合などには手術による治療が行われます。

 

手術の流れ

麻酔は全身麻酔か伝達麻酔(上肢のみの麻酔)で行います。通常は手術の前日(手術前日が休日の場合は2−3日前)に入院します。

CM関節に対する手術方法は多岐にわたりますが、当院では主にSuspensionplasty (Thompson法)を行っております。変形をきたした大菱形骨の一部あるいは全てを切除摘出したのち、関節周囲の靭帯(長母指外転筋腱APL)を反転し、反転した靱帯を親指の付け根の骨に結びつけて母指を対立位(他の指と向き合う位置)に再建します。手首を曲げたり母指を開く働きをする腱は複数ありますが、そのうちの一部を利用して靭帯を再建します。本手術により握る際の痛みはなくなり、握力は緩やかに回復していきます。変形の症状が高度でCM関節だけの手術では母指の変形を矯正できない場合は、人工指関節や固定手術を併用して行うこともあります。CM関節形成術だけで通常1~2時間程度かかります。術後は専用装具の装着やリハビリテーションをしばらく継続することが非常に重要ですが、成績は概ね良好なものとなっております。

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CM関節の緩みが著しく腱による制動が困難な場合(全身性エリテマトーデスなどの患者さんなど)や、比較的負荷の高い手の労働作業が必要な場合などは、関節固定術のみを行うこともあります。

個々の患者さんの基礎疾患、関節の状態、希望、職業などによって個別に判断し、それぞれの患者さんに適した治療法や手術を行えるよう、日々診療を行っております。

文責 王 興栄
2021年4月1日更新