エンブレル

「エンブレル」は1998年に米国において世界で初めて認可された生物学的製剤です。国内では2005年から使用開始されており、当センターで最も使用患者数の多い生物学的製剤です(平成25年7月現在)。国内で約13,000例に対して行われた市販後全例使用成績調査の結果、投与開始24週後に9割近くの方で一定以上の効果が認められています。

「エンブレル」はTNF受容体とヒト免疫グロブリンの一部を結合させた製剤で、完全ヒト型製剤(マウスなどの異種タンパクを含まない)のため、リウマトレックスの併用は必須ではありません。しかし他の生物学的製剤同様にリウマトレックスを併用したほうが有効性が高まることが確認されています。また完全ヒト型製剤のためアナフィラキシーはほとんどありませんが、注射部位反応などのアレルギー反応がみられることがあります。また、他の生物学的製剤同様、免疫の働きを低下させるため、感染症にかかりやすくなることがあります。

「レミケード」や「ヒュミラ」同様に「エンブレル」も炎症反応に関与する生体内物質(サイトカイン)であるTNFαの働きを抑えますが、先の2剤が抗体製剤であるのに対し、「エンブレル」は受容体製剤であり、TNFとの結合の仕方に違いがあります。この違いにより「エンブレル」は他のTNF阻害薬に比べて、結核や悪性リンパ腫などの発症リスクが低い可能性が報告されています。

「エンブレル」は、体内で薬剤の血中濃度が半減するまでの時間が約4日と生物学的製剤の中で最も短いため、他の生物学的製剤に比べ投与間隔が短いという欠点がありますが、これにより逆に副作用が発現した際にはもっとも対処しやすいということも言えます。

「エンブレル」の投与方法は皮下注射で、一定の条件を満たす方は在宅自己注射が可能です。10-25mgを週2回、または25-50mgを週1回投与します(標準使用量は週50mg)。標準使用量の半量である週25mgから開始して効果が弱い場合に増量したり、週50mgの投与によって寛解が得られた場合に用量を半減するなど用量調整が可能な薬剤です。ただし同様に用量調整が可能な生物学的製剤である「レミケード」と異なり、標準使用量から増量しての投与は出来ません。

「エンブレル」は1本(25mg)約15,000円です。週25mg投与の場合には自己負担額が月に約18,000円となり(3割負担の場合)、生物学的製剤の中では比較的安価に導入できる利点があります(これに再診料・検査料・処方箋料などが加わります)。

文責 猪狩勝則
2013年7月10日改筆