東京女子医科大学病院 膠原病リウマチ痛風センター
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全身性強皮症 (systemic sclerosis, scleroderma, SSc) は、線維化と血管内皮障害を特徴とする膠原病のひとつです。日本では、約2万5千人の患者さんがいらっしゃいます。残念ながら、その原因はいまでもわかっていません。線維化とは、いろいろな臓器に線維物質(コラーゲンなど)が蓄積し、その結果、組織の柔軟性が失われて、臓器障害が引き起こされます。血管内皮障害とは、血流障害のことを意味しております。つまり、血行が悪くなり、指先が冷たく感じたり、しびれたりします。

初発症状としては血管内皮障害であるレイノー現象が最も多く、その後、手指、足趾より皮膚硬化が体幹に向かって進行していきます。レイノー現象とは、手指の色調の変化を示します。つまり、寒いときや緊張した時に手指の血管が収縮して、白っぽくみえます。皮膚の症状ばかりでなく、関節炎、筋炎、肺線維症、肺高血圧症、消化管障害、心筋障害、腎機能障害などへの進展がみられることもあります。
診断のポイントは、手指から広がる皮膚の硬化所見です。手指から手背を超えて腕の方まで皮膚が硬いことを感じたら全身性強皮症を疑います。つまり、レイノー現象があり、皮膚の硬さを感じたら膠原病内科を受診してください。我々は、血液検査にて全身性強皮症に特徴的な自己抗体を測定します。診断には、このように臨床症状、血液検査、レントゲン検査にて行います。

治療方針としては、第一には血流の改善をめざして血管拡張薬の内服治療を開始します。皮膚や内臓の硬化・線維化が進行する場合には、免疫抑制療法を行っております。シクロホスファミド、副腎皮質ステロイド薬の免疫抑制薬を患者さんの状態に合わせて用いることにしております。近年、新規の免疫抑制薬であるリツキシマブを使用することができるようになり、有効な患者さんがいらっしゃることがわかっております。これらの薬剤は副作用の可能性があり、注意深く使用できるかどうかを判断するために、免疫抑制療法を開始する前には入院していただき全身の検査・診察を行っています。
間質性肺疾患という肺における線維症に対しては、免疫抑制薬以外に抗線維化薬であるニンテダニブが使用できます。この治療薬は、新しい治療薬で肺線維症の進行を抑制できます。

肺高血圧症という肺の血管が細くなる病態を合併することがあります。この場合には、特異的肺血管拡張薬を早期から治療薬として用います。
これらの治療方法は、全身性強皮症に特異的な治療方法ではありません。いまのところ、全身性強皮症に対する根本的治療はありませんが、今後、多くの臨床研究の結果、新薬が開発される可能性がありますし、当院においては、新規治療薬開発を目的として、臨床研究が行われています。

全身性強皮症は「全身性」という病名のとおり、全身に症状がひろがることがある疾患です。ですから、心配な病気ですとよく教科書や家庭の医学書には記載されています。確かに原因不明の病気で内臓にも症状がでることがありますが、東京女子医科大学での研究では、半数ちかくの患者さんでは、皮膚にのみ症状がみとめられ、内臓に症状が広がることはありません。しかし、早期診断、早期治療が大切です。手指の冷感を伴う色調の変化があり、手指の屈曲時にすこしでもこわばりを感じるようでしたら、全身性強皮症も考えて頂き、ぜひ、我々の初診外来を受診していただければよろしいかと思います。

文責 川口鎮司
2023年3月28日 更新