診断と治療 小児 自己炎症性症候群

自己炎症症候群は体にそなわる「自然免疫」の異常によって炎症サイトカインが過剰に産生される疾患群です。多くの場合遺伝子の異常を伴います。

わたしたちの体には、外来からの病原微生物を防御する免疫システムとして、「獲得免疫」と「自然免疫」の2つのシステムが存在します。獲得免疫は病原微生物に特異的に抗体をつくって反応するのに対し、自然免疫は非特異的に、もしくは病原微生物の共通部分をパターン認識して応答します。獲得免疫が文字通り生まれてから徐々に獲得されるのに対して、自然免疫は生まれながらに備わっています。

原因不明の持続する発熱または周期性発熱など持続する炎症が存在する場合、この疾患群を疑いますが、自己炎症症候群に属する疾患により皮膚症状、関節症状、眼症状、中枢神経症状など多彩な症状が出現します。

自己炎症症候群は近年、研究が盛んになり疾患の数も少しずつ増えていますが、主なものを示します。家族性地中海熱は遺伝子の異常が認められる自己炎症症候群では最も日本で多く、成人で発症する方もいます。また、PFAPAは遺伝子の異常は認められないのが通常ですが、多くは5歳までに発症し、繰り返す発熱をきたします。

・ 家族制地中海熱 (FMF) (国内患者数 約500-1000名) *
・ クリオピリン関連周期熱症候群 (CAPS) (同 約100名) *
・ TNF受容体関連周期性症候群 (TRAPS) (同 約30名) *
・ 高IgD症候群 (メバロン酸キナーゼ欠損症) (同 6名、潜在患者推定10名) *
・ ブラウ症候群・若年発症サルコイドーシス*
・ PAPA (化膿性関節炎、壊疽性膿皮症、ざ瘡) 症候群 (同 2名、同数名) *
・ 中條—西村症候群*
・ 周期性・アフタ性口内炎・咽頭炎・リンパ節炎症候群 (PFAPA)
・ 慢性再発性多発性骨髄炎 (CRMO)
(患者数は自己炎症性疾患友の会ホームページを参照)

これら自己炎症性疾患では、自己免疫性疾患に特徴的な自己抗体や自己反応性Tリンパ球は認めません。したがって、その診断には、臨床症状や遺伝子検査が重要となります。当センターでは*のものを含め12遺伝子の検査を行なっています。現在、すべての自己炎症症候群で治療法が定まっている訳ではありませんが、診断が早期につくことにより、炎症性サイトカインを阻害する生物学的製剤などにより、慢性持続的な炎症を抑制し、アミロイドーシスによる臓器障害を防ぐことが可能になる場合があります。「イラリス®」 (一般名:カナキヌマブ)は炎症性サイトカインであるIL-1を阻害する薬剤で周期性発熱症候群のうちクリオピリン関連周期性症候(CAPS)の治療薬として使われていますが、2016年12月、新たに「既存治療(主にコルヒチン)で効果不十分な家族性地中海熱」、「TNF受容体関連周期性症候群」、「高IgD症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症)」の治療薬として効能追加の承認がされました。こうした自己炎症症候群の治療には高額なものもありますが、近年、難病新制度により、自己炎症症候群のいくつかが新たに特定疾患、小児慢性特定疾病として承認され、公費負担で診療が行えるようになっています。

難病新制度により指定難病に承認された自己炎症症候群

特定疾患(H27.1.1施行)
・クリオピリン関連周期熱症候群 (CAPS)
・TNF受容体関連周期熱症候群 (TRAPS)
・ブラウ症候群

小児慢性特定疾病(H27.1.1施行)
・家族性地中海熱 (FMF)
・クリオピリン関連周期熱症候群 (CAPS)
・TNF受容体関連周期性症候群 (TRAPS)
・化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群 (PAPA症候群)

特定疾患(H27.7.1施行)
・家族性地中海熱 (典型例のみ)
・中條・西村症候群
・高IgD症候群
・化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群 (PAPA症候群)

文責 宮前多佳子
2017年3月6日