平成24年4月 第24号

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発行 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター

去る平成23年11月26日(土)に行われた第32回公開講座の講演内容をまとめました。
公開講座では皆様の役に立つ情報を提供できるよう心がけています。
皆様のご参加をお待ちしております。

 

「関節リウマチの治療薬剤の最新情報」

東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター
内 科 中島 亜矢子

ここ数年で、関節リウマチの治療は免疫抑制剤や生物学的製剤の進歩により非常に進歩しました。公開講座で『リウマチ診療の最新情報』としまして、皆様にご協力いただいておりますIORRA調査から明らかとなったリウマチ診療の状況、新しく提唱された関節リウマチの分類基準や寛解基準、メトトレキサート(リウマトレックス)を中心とした治療が大切であること、現在日本で使用可能な生物学的製剤などについてお話ししたことをまとめました。

IORRAは2000年から当センターで始まった関節リウマチ患者さんの実態調査です。DAS28は患者さん自身による疾患評価も含めた複合的疾患活動性指標ですが、それが回を経るごとに改善しています(下図)。その背景にはメトトレキサートの服用頻度や服用量が増したこと、2003年からの生物学的製剤の導入が挙げられるでしょう。

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関節リウマチ診療をとりまく状況にも変化が見られています。欧米では2009年、早期からの治療導入を目指して関節リウマチの分類基準が22年ぶりに改訂されました。また、2010年には関節リウマチのより厳格な疾患コントロールを目指した新寛解基準も提唱されました。

メトトレキサート(リウマトレックス

メトトレキサートは関節リウマチ治療の中心的な薬物です。関節リウマチと診断されたら、早めに抗リウマチ薬による治療を受けることがすすめられますが、病気の勢いが強い場合、リウマトイド因子や抗CCP抗体が陽性の場合、すでにレントゲン上骨関節の変化が認められる場合などでは、はじめからメトトレキサートで治療されることが好ましいです。そして、必要量のメトトレキサートで治療されることが大切です。メトトレキサートは、増量されるほど有効性が高くなりますが、肝障害などの副作用の割合も高くなりますので、有効性と副作用のバランスをみた治療がなされます。メメトトレキサートの使用に注意した方がいい方、避けた方がいい方とメトトレキサートで加療されている場合の注意を表に示します。

表1. メトトレキサート(リウマトレックス)使用に際し、注意した方がいい方、避けた方がいい方

  1. ご高齢の方
  2. 腎機能が低下している方
  3. 高度に肺の機能が落ちている方
  4. 白血球・血小板が非常に少ない方
  5. 慢性的な感染症のある方
  6. B型肝炎、C型肝炎ウィルスをお持ちの方
  7. 肝硬変、低栄養状態の方
  8. リンパ増殖性疾患に罹患したことのある方

表2. 効果的、安全にメトトレキサート(リウマトレックス)による治療を受けるために

  1. 定期的な診察、血液検査、胸部や手足レントゲン検査などを受けましょう。
  2. 発熱や息切れ、強い倦怠感など体調不良を感じたら、早めに受診しましょう。
  3. インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン(肺炎のリスクの高い方)などの予防接種を受け、感染症の予防を心がけましょう。
  4. 発熱や脱水、感冒など感染症の際には、メトトレキサート内服を中止し、必要な治療を受けましょう。

 皆様にご協力いただいておりますIORRA調査の解析結果などをもとに、2011年2月、メトトレキサートの週16㎎までの増量が認められ、関節リウマチ治療が格段に進歩しました。ここに、皆様のIORRAへのご協力に感謝し、御礼申し上げます。

生物学的製剤

日本でも、関節リウマチ治療薬として2003年に初めてインフリキシマブ(レミケード)が導入され、現在ではエタネルセプト(エンブレル)、アダリムマブ(ヒュミラ)(以上TNF阻害薬)、トシリズマブ(ア クテムラ)(IL-6阻害薬)、アバタセプト(オレンシア )(T細胞共刺激阻害薬)、そして2010年9月には 日本で6番目、TNF阻害薬としては4番目のゴリムマブ(シンポニー )が認可されました。いずれも注射 薬(皮下もしくは経静脈)で、おおむね有効性や副作用はどの薬剤も同程度でメトトレキサートと併用した 方が高い有効性が得られることが多いようです。奏功すれば、強力な抗炎症効果が得られ、骨関節破壊の進 行を抑制するばかりでなく、欧米では関節リウマチでみられることが多い心血管障害の発症も抑制する効果 があるとされています。しかし、結核や肺炎など感染症のリスクが増す可能性も指摘されています。また、 生物学的製剤は非常に高額です。

使用に際しては、患者さん一人ひとりのご年齢、病気の勢い、合併症(腎障害、呼吸器障害、糖尿病、悪性腫瘍の有無など)、肝炎ウィルスやニューモシスチス肺炎のリスクなどを十分検討します。生物学的製剤で治療されている場合には、感染症を起こしていても発熱や咳痰などの症状が出にくいことがあります。強い倦怠感などいつもと異なる異常を感じた際は、早めに受診しましょう。メトトレキサートを服用している場合と同様の注意(表2)が必要です。糖尿病のコントロールや禁煙にも心がけましょう。

さいごに

関節リウマチの診療は、メトトレキサートや生物学的製剤によりこの10年余りで格段に改善されました。お一人お一人のご病状に合った最善の治療をお受けいただけるよう、センターの医師および職員一同、努めてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

「リウマチ手の美容再建~手のコンプレックスを解消しましょう~」

東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター
整形外科 岩本 卓士

はじめに

関節リウマチは全身の関節に炎症を起こす疾患ですが、特に手指・足趾といった末梢の小関節に強い変形を引き起こします。近年の生物学的製剤の登場により関節リウマチ治療は大きく変遷を遂げ、病変の進行を阻止することも可能となっていますが、一度変形した関節は薬物療法で改善することは困難です。

「手」は人間の体のなかで「顔」に次いで露出する部位であり、外見の変形が目立つために日常生活・職場で不快な思いをされたというお話を伺います。それにも関わらず「手の美容外科」という概念はなく、治療法を知らずに諦めている患者さんも多くいらっしゃることと思います。今回は手指変形に対する治療法の一部をご紹介いたします。

関節リウマチによる手指変形

頻度が高く代表的な変形にはそれぞれ名称がついており、尺側偏位・ボタン穴変形・スワンネック変形と呼ばれます。どの変形も軽度の場合には問題は少ないため、手術治療よりも拘縮予防・進行予防としてのリハビリ・装具療法を行います。進行して機能的・美容的に問題を生じた場合には手術治療を検討します。

尺側偏位(図1)

MP関節(付け根の関節)の滑膜炎により伸筋腱(指を伸ばす腱)が脱臼するために尺側(小指側)に指が引っ張られて生じます。軽度の段階では尺側に曲がりますが、進行すると指を伸ばすことが困難になり手のひらを開くことが難しくなります。軽度の場合には脱臼した腱を元の位置に戻す再建手術を行いますが、進行した場合には人工関節を併用して行います。手術により美容的な改善は大きいですが指の曲がりが少し固くなりますので、強く握る作業が多い患者さんの場合には慎重に判断する必要があります。

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図1:尺側偏位 左:手術前 右:手術後

ボタン穴変形(図2)

指のPIP関節(第2関節)の滑膜炎によりPIP関節を伸ばす伸筋腱が緩んでしまうことが原因となります。薬物療法により関節の腫れは改善しても緩んだ腱は戻らないために変形が生じます。手術治療により緩んだ腱を再建(作り直す)しますが、関節の変形が強い場合には人工関節にする場合もあります。手術により指の曲がりが固くなることもありますので、軽度の変形の場合には手術はお勧めしません。

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図2:ボタン穴変形 左:手術前 右:手術後

スワンネック変形(図3)

MP関節あるいはDIP関節(第1関節)の炎症により生じます。関節リウマチ患者さんではMP関節の炎症によるものが多く、伸筋腱が脱臼してMP関節が伸ばせなくなることによりPIP関節が過伸展(伸びすぎること)します。治療の難しい変形ですが、自分で指を曲げるのが困難になったときに手術を考えます。手術は軽度の場合には腱・靭帯の再建手術、高度の変形の場合にはPIP関節を曲げた形での関節固定術により機能的にも美容的にも改善が得られます。

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図3:スワンネック変形 左:手術前 右:手術後

おわりに

代表的な手指変形をお示ししましたが、実際にはこれらが組み合わさって生じるため患者さんによって変形の仕方も違います。個々の患者さんの性別・年齢・職業・生活様式によっても治療法は異なりますので、ご相談の上で治療方針を決定しています。月曜午後にリウマチ手の外科外来を行っていますので、手指の変形が気になる患者さんはご相談下さい。また当センター整形外科ホームページでも動画をご紹介しておりますので、ご覧になって下さい。

http://www.twmu.ac.jp/IOR/JointSurgery/hand.html

 

 

●IORRA調査について●

当センターでは毎年4月と10月に関節リウマチで通院されている患者の皆様に、IORRA調査をお願いしております。個々の患者さんの正確な情報を知ることによって、患者の皆様により良質な医療を提供する上で貴重なデータとなります。詳しくは、主治医にお尋ね下さい。

 

  

●リウマチ友の会のご案内●

当センターを受診されている方の中には、ご病気のこと、生活のことなど不安に思われている方々もいらっしゃることと思います。そのような患者さん方が手をつなぎ、様々な情報を共有することによって、より良い療養生活を送る目的で組織されている団体【社団法人 日本リウマチ友の会】があります。ご希望の方は、当センター受付にパンフレットを用意してありますので、お申し出下さい。

社団法人 日本リウマチ友の会

〒101-0047 東京都千代田区内神田2-7-7 新内神田ビル3F
ホームページアドレス http://www.nrat.or.jp/

 

 

●公開講座のご案内●

「第33回 公開講座 ─自分の病気を知ろう─」

日時:平成24年6月2日(土)13:00~16:00(12:30~ 受付開始)
場所:東京女子医科大学 弥生記念講堂(本院 糖尿病センター隣り)
   東京都新宿区河田町8-1
   * NSビル・当センター本部ではありません。

内容:
《第1部》13:00~14:40

 『関節リウマチの医療費に関する話題』・・・・・・田中 栄一 医師

関節リウマチのような慢性疾患では長期間の治療が必要で、生涯に要する患者さんの医療費負担は大きくなります。近年、関節リウマチの治療は大きく進歩しましたが、同時に医療費の高騰が懸念され、患者さんのみならず社会的にも重要な問題となっています。そこで今回は、関節リウマチの医療費について、これまでの IORRA調査で分かったことを中心に報告させていただきます。また、関節リウマチ患者さんが利用できる医療・福祉制度についても説明する予定ですので、多数のご参加をお待ちしております。

 

 『膝の痛みの治療法 ~運動療法から人工関節置換術まで~』・・・・・・猪狩 勝則 医師

関節リウマチの治療の主体は薬物療法ですが、すでに破壊されてしまった関節を修復することは難しいのが現状です。膝関節は比較的痛めやすい関節ですが、痛めてしまうと歩行機能に大きな影響がでるため、日常生活動作は大きく障害され、生活の質が低下します。初期であれば運動療法が効果的であることもありますが、膝の機能を修復する手段としてもっとも強力な治療法が人工膝関節置換術です。人工関節置換手術は各種人工関節の中でも最も成績が安定し、治療法として確立しているものの一つで、当院でも数多く行われています。今回の講演では最新の人工関節置換術の情報をご紹介するとともに、運動療法、痛み止めの使い方などについてもご説明いたします。

 

《第2部》15:00~16:00

『療養相談』
内科(治験・生物学的製剤・くすり他)・整形外科(手術)
リハビリ・食事指導

大変ご好評いただいている、治験・生物学的製剤・手術など経験した患者さんに協力していただき、患者さんが患者さんに相談するコーナーを設けます。その他に、くすりや病状についての質問など、内科・整形医師に直接相談出来る場も設けますので、ふるってご参加ください。

 

 

●センターへのお問い合わせ●

東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター

本部:〒162-0054 東京都新宿区河田町 10-22
代表電話 03-5269-1711
予約電話 03-5269-1721

分室:〒163-0804 東京都新宿区西新宿 2-4-1 新宿 NSビル 4階
代表電話 03-3348-0988
予約電話 03-3346-2434
ホームページアドレス http://www.twmu.ac.jp/IOR/

 

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