手術症例詳細および専門治療

診療の特徴

日本では大学病院や癌センターなどの癌の手術治療を行っている大きな施設では、次々に新しい患者さんの手術をすることが求められているために、再発した患者さんの治療を自施設で行う余裕がありません。
せっかく有名な先生に手術していただいても再発したらよその施設に紹介されたとよく耳にします。 確かに、施設として社会から求められる役割分担があります。
たとえば風邪や虫垂炎で大学病院を受診する患者さんはいません。
しかし、患者さんとしては、「おなかを切ってもらった先生」に最後まで診てほしいという希望があります。
むろん癌の手術をした医師がすべての患者さんを診続けることは不可能です。
しかし当センター外科では、チーム医療と紹介医との綿密な連携によって癌の治療をいわゆる治療を卒業する5年間は主治医チームがきめ細かく管理しています。

末期癌の患者さんやご家族が希望される場合、在宅や関連ホスピスへの手続きをお手伝いしています。
しかし当センターは、大学病院であるにもかかわらず、手術後再発した患者さんが希望された場合に当センターで看取っています。
私たちは看取りは治療の延長であり、癌診療の一環であると考えています。
ベッド稼働率(一つベッド当たりどれだけ患者さんが使っているかという指標)やDPC(丸め請求で入院期間が長くなると病院の収益が少なくなる仕組み)が病院経営で重視される時代に逆行しているともとれる私たちの診療姿勢は、女子医大の基本理念である「至誠と愛」に基づいた「患者とともに」という姿勢を貫くものであります。

精神だけではありません。「手術症例詳細および癌切除後成績詳細」に示されているように、

1.進行癌の占める割合が高い。
2.すべてのステージで良好な生存率。
3.進行癌特にステージIVで良好な生存率を達成。

当センターは中山恒明先生の設立以来、常に他施設が手を付けられない難度の高い手術や進行癌の手術を行ってきました。
卓越した手術手技、百戦錬磨の術後管理、きめ細やかな長期管理からなる確かな戦略に支えられた外科診療を提供しています。
ステージIVの癌患者さんの高い生存率が意味するものは「再発しながら生存している」患者さんが含まれていることです。
私たちは手術だけが私たちの仕事とは考えていません。
化学療法や放射線療法さらには免疫療法も組み合わせて、一日でも幸せに生きたいと望む患者さんを、持てる技と力を振り絞って支えていくことを目指しています。
それには一人の外科医では不可能です。 それぞれの臓器担当の指導医と志高い医師たちがきめ細やかなチーム医療を提供し、東京女子医科大学の当該診療科が協力してレベルの高い診療を提供しています。

専門用語解説

ステージ分類

同じ治療をしても癌の進み方によって効果が異なります。
そこで進み具合をいくつかの段階(ステージ)に分けて、治療の効果を評価します。
腫瘍の大きさ、深さ、広がりを組み合わせて決めます。
I,II,III,IV,Vと数が大きくなるほど進行しています。またIIIを二つに分けてIIIaとIIIbに分けることがあります。bのほうが進んでいます。臓器によってその定義が細かい点で異なりますが、通常ステージIVは、癌が派生した臓器から遠くのリンパ節やほかの臓器に広がっている状態です。

内視鏡治療

内視鏡(いわゆるカメラ)で消化管の内側から腫瘍を切り取る方法です。
腫瘍が粘膜内に留まっている症例に行われます
。 腫瘍が小さい場合、一回で切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)が行われることもありますが、現在は大きな腫瘍に対しても確実に腫瘍の境界を見ながら少しずつ粘膜下層を切って一括切除する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が行われています。
これらの治療の利点は外科手術と同じように切除標本が得られ、この標本を詳細に調べることにより腫瘍が取り切れているかどうかを判定できる点にあります。
癌がとり切れていない心配がある場合は外科的切除を追加します。

胃癌手術

胃癌は、癌の場所、広がりや性質によって、胃の全部を切り取る胃全摘、出口側3分の2を切り取る幽門側胃切除、入り口を切り取る噴門側胃切除術が行われます。

膵臓切除

膵臓は横に細長い形をしています。
そこで魚に見立てて、十二指腸側を頭部、脾臓側を尾部、頭部と尾部の間を体部と呼びます。
腫瘍の位置と広がりによって、膵頭切除、膵中央切除、尾側切除が選択されます。

内視鏡外科手術

外科手術には腹部や胸部を大きく切開して直接目で見て手術する方法(開腹手術・開胸手術)がこれまで行われてきました。
この開腹、開胸手術に対して、お腹や胸に5㎜から1㎝の穴をいくつかあけて、その穴を通してお腹や胸の中をカメラ(腹腔鏡、胸腔鏡)で見ながら、はさみやピンセットの働きをする鉗子や電気メスなどの器具を使って手術する腹腔鏡手術、または胸腔鏡手術が近年発達しています。
この手術の大きな利点は従来の方法と比べて創が小さいので術後の痛みが少ない、回復が早いという点です。全ての症例に行えるわけではありませんが、この方法は患者さんにとって体への負担が少ない手術と言えます。

食道

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食道外科専門医認定施設

ISDE(国際食道疾患会議)Tokyo Office 事務局
食道外科専門医3名
食道科認定医6名
内視鏡手術技術認定医1名
日本臨床腫瘍グループ(JCOG)食道癌グループ所属

構成員
講師 成宮孝祐
准講師 工藤健司
助教 矢川陽介 ビオセラクリニック 出向中
助教 前田新介
助教 豊島幸憲 上福岡総合病院 出向中
助教 小川杏平
前客員教授 大杉治司 上福岡総合病院 名誉院長
食道癌治療

2019年度は約100人の食道癌患者が紹介受診され、手術症例42例、ESD症例が31例、化学放射線治療が18例、化学療法および無治療緩和ケアーが12例でした。また食道癌以外の食道粘膜下腫瘍、食道アカラシア、食道裂孔ヘルニア(胃食道逆流症)、食道憩室、難治性逆流性食道炎など食道疾患全般に対し、消化器内視鏡科と連携しPHモニターや食道内圧測定などの検査を施行し、手術やバルーンブジー、薬物治療なども導入しております。

食道癌治療件数の推移

(1)胸腔鏡下手術
当科では2011年度より大阪市立大学消化器外科大杉治司教授を客員教授としてお迎えし左側臥位での鏡視下食道切除術を導入してまいりました。適応は、サルベージ手術以外の手術症例全例に導入し、2019年度は食道切除症例42例中19例に胸腔鏡手術施行しております。また、今年度はロボット手術の導入をめざしており、胃外科と共同にて食道胃接合部癌に対しロボット手術を開始いたしました。

(2)外来からチーム医療の導入
2014年度より食道癌治療におけるチーム医療を導入してまいりました。2018年度、入退院支援センターの設立に伴い、循環器内科、口腔外科、麻酔科の医師だけでなく理学療法士の呼吸器サポートチーム、薬剤師、看護師、栄養士が一丸となった食道癌治療体制を確立しました。現在はご紹介いただいたその日から、退院日までのスケジュールをチームで管理し栄養や筋肉量を評価し侵襲の高い食道がん治療に耐えうる環境つくりにも力を注いでいます。食道癌術前化学療法および術前化学放射線療法施行患者を対象とした体組成評価の意義および栄養療法の有効性の検討という研究を開始し日本食道学会で多業種での発表を予定しております。

(3)[教育]
現在食道班として成宮孝祐講師、工藤健司准講師、前田新介助教、小川杏平助教、大杉治司前客員教授の5名が女子医科大学大学および看護大学にて診療教育にあたり、至誠会第二病院に佐藤拓也助教、白井雄史助教、Bio-Thera Clinicに矢川陽介助教、上福岡総合病院に豊島幸憲助教が出張中です。

(4)[研究]
臨床研究としては日本最大の多施設共同研究グループである日本臨床腫瘍グループ(JCOG)食道癌グループに所属しており、プロトコールに適応した場合は登録し治療を行っております。
(1) 再生医療として食道粘膜下層剥離術(ESD)後の粘膜欠損部への細胞シート付着
(2) 食道癌手術における再建臓器の評価
(3) 遺伝子解析による化学放射線治療の効果予測因子の研究
(4) 食道胃接合部癌に対する至適リンパ節郭清と再建
(5) 食道癌治療における術前栄養管理と筋肉量
(6) 食道癌低侵襲手術

(5)[活動]
1. 近隣の慶応大学、国際医療センター、東京女子医大の3病院でおこなっている多業種による勉強会を年2回行っております。
 本年度は第5回Surgical Nutrition Seminarが2019年11月26日国際医療センター会議室にて開催されました。
 各施設から食道癌治療に難渋した症例を持ち寄り討論をおこないました。

2. 消化器外科医養成プログラムとして日本消化器外科学会主催の消化器外科手術手技講習会(JESUS)の講師として
 成宮医師が毎年参加し消化器外科医の育成に努めています。2019年9月20日、21日愛知県豊橋市ホテルシーパレスリゾートにて
 全国の消化器外科医師をめざす初期研修医120名が参加し開催されました。

3. 東京女子医大近隣にある都立戸山高校に通う将来医学部を志望している高校3年生チームメデイカル30名に対し、
 医療現場の見学および実際の学生講義の模擬授業をおこない未来の医療従事者の育成に協力しています。

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胃グループでは主に胃癌、胃GISTに対する治療を行っています。

胃癌に対しては、内視鏡的治療から開腹術、腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術、化学療法などを、一元的に年間150~200症例行っております。(図1)
胃GISTに対しては狭窄、変形のない腹腔鏡下胃部分切除を年間15~20症例行っております。

図1胃癌手術件数の年次推移(2014-2019年)

1. ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)

早期胃癌に対する胃切除例を後方視的に検索したところ12.7%の症例が病理学的に内視鏡的切除が可能でした。(図2)
この結果を踏まえ、当科では積極的に内視鏡治療を選択し、年間100症例前後行っています。

図2早期胃癌切除例と内視鏡治療適応(2006-2014年 353例)

2. 開腹術

主に進行癌に対する治療として行っています。切除可能進行癌に対しては当科主催の多施設共同研究を行っています。
術前オキサリプラチン+S-1を2コース行った後手術を行う臨床研究で、現在集積中です。
また、切除不能進行癌、再発癌に対してconversion surgeryを積極的に行っており、傍大動脈リンパ節や肝転移、CY1陽性胃癌に対して化学療法導入後の手術を行っております。

図3進行胃癌に対する治療方針

3. 腹腔鏡下手術、ロボット支援手術

ロボット支援下手術は従来の腹腔鏡下手術と比較し優位に合併症が軽減した報告より、昨年4月から保険での取り扱いが可能となっております。当科では昨年3月よりロボット支援下胃切除を導入し、現在保険認定施設となっております。2020年4月現在47例施行致しました。(図4)従来の腹腔鏡下手術はESD適応外早期胃癌、ESD後追加切除例。ロボット支援下手術は合併症が軽減できることより、難易度が高い高度肥満例、軽度進行癌に対して行っています。BMI 25を超える肥満例も同様にロボット支援下手術が可能でした。(図5)

(図4)腹腔鏡下手術の年次推移(2004-2019)

(図5)BMI別ロボット支援下手術の周術期成績(2018-2019 12例)



(図7)ロボット支援下手術 D1+郭清 ビルロートⅠ法 デルタ吻合

4. 胃GISTに対する治療

胃GISTは10万人に1人と比較的まれ疾患ではありますが、年間15~20人前後の切除を行っております。
治療法は部分切除が推奨されておりますが、従来法では胃の変形、狭窄が問題となっておりました。
当科では発育形式により切除を選別し、胃内容を解放せず、内視鏡を併施した腹腔鏡下に部分切除を行うclosed LECSを行っています。(図9)これにより変形がほとんどなく噴門直下の腫瘍も狭窄なく切除可能となっております。

(図9)発育形式別 胃GIST内視鏡像と腹腔鏡像

(図10)術前後内視鏡像

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大腸

>診療グループ紹介

大腸治療内視鏡症例数(年次推移)

大腸内視鏡的粘膜下層剥離術(年次推移)

大腸癌手術症例数(年次推移)

大腸癌手術症例累積5年生存率

潰瘍性大腸炎・クローン病手術症例数(年次推移)

対象疾患

大腸癌、大腸腫瘍、炎症性腸疾患など大腸疾患全般

特徴

大腸グループでは大腸癌をはじめ潰瘍性大腸炎(UC)やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)を中心に診療にあたっております。板橋先生、井上先生のもと、消化器外科専門医5名、大腸肛門病学会専門医5名、内視鏡外科技術認定医3名の指導体制で専門的かつ最新の治療を行っております。手術は術前化学放射線療法(CRT)後の直腸癌、難易度が高いといわれている側方郭清や横行結腸癌症例も含め、大部分の症例で腹腔鏡下手術を行っています。昨年の主な手術症例数は、大腸癌158例(結腸癌 102例、直腸癌 56例)、UCおよびクローン病 43例などでした。
大腸癌に対しては根治性とともに機能温存も重視した過不足のない治療を基本方針としております。T1aまでの症例であればリンパ節転移の可能性が極めて少なく、EMRやESDなどの内視鏡的切除が適応となります。ESDは難易度が高く高度な技術を要しますが、腫瘍径の大きな腫瘍でも一括切除が可能な有用な方法です。昨年は12例にESDを行いました。また、直腸癌に対しては、EMRやESD以外にも従来から行っている経肛門的切除に加え、新たな方法としてtransanal minimally invasive surgery(TAMIS)も導入し、様々な手段で対応できる体制を取っております。
直腸癌のうちT3以深あるいはN(+)の下部直腸癌、いわゆる進行下部直腸癌に対しては術前CRTを行っております。CRTの主な目的は直接的な抗腫瘍効果による局所制御ですが、腫瘍縮小によるcircumferential resection margin(CRM)の確保や括約筋機能温存の可能性も期待できます。また、腫瘍下縁が下部直腸より低位の肛門管におよぶ腫瘍であっても、肛門挙筋への浸潤がなく、組織型が分化型で、外科的肛門管内の進展が固有筋層内に留まる症例であれば、究極の括約筋機能温存術といわれる、intersphincteric resection(ISR)でR0切除が可能です。厳密な適応のもとISRを行い腹会陰式直腸切断術(APR)症例は激減しております。
緊急で経肛門的減圧チューブ挿入や人工肛門造設が必要な大腸癌イレウスに対しては消化器内科と連携しステント挿入を積極的に行っております。ステント挿入のメリットとして、不安定な全身状態での緊急手術が回避でき大腸癌の病期評価を通常どうり行った後に待機手術が行えること、through the stentで本来不可能であった口側腸管の内視鏡観察が可能になることなどが挙げられます。手技は大腸ステント安全手技研究会のミニガイドラインに準拠して合併症なく行えています。
大腸癌と同様に潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患は年々増加傾向にあります。2009年に内科と外科との密接な連携をはじめ、チーム医療を充実させることを目的として、炎症性腸疾患センターを開設し診療を行っています。センターの特色を生かして、合同カンファレンスや回診などを定期的に行い、個々の患者様の病状に応じた至適な治療を行うよう心掛けております。潰瘍性大腸炎やクローン病は内科的治療が中心ですが、重症例や難治例、癌化例は外科的治療の対象となります。手術は基本的に腹腔鏡下手術を行っています。また、当施設は厚労省IBD班プロジェクト研究のメンバーでもあり、様々な多施設共同研究にも参加しております。
昨年、当院で1例目のRobot支援下手術が行われました。da Vinci Surgical Systemの特徴として、奥行き感のある鮮明な三次元ハイビジョン画像、手ブレ防止機能、自由度の高い多関節鉗子操作(Endo Wrist instrument)などのメリットがあり、大腸外科領域では、下部直腸癌症例、bulkyな腫瘍、狭骨盤例など、通常の腹腔鏡手術では難易度が高い症例での有効性が期待されています。1例目の症例は、下部直腸癌症例で超低位前方術を施行しfecal diversionは置きませんでしたが、合併症なく順調に経過し術6日目での早期退院が可能でした。Robotic Surgeryは、近日中に、保険収載される予定になっており症例数の増加が予測されます。現時点で10例のRobot支援下手術を行っております。

研究

大腸グループは2020プロジェクトして「下部直腸癌の局所再発を低下させる」、「StageIV大腸癌の予後を向上させる」、「同時性肝転移の残肝再発を低下させる」を掲げ、研究を続けております。このうち、下部直腸癌の局所再発を低下させる戦略として行っている術前CRTについては、現在までの登録症例数は約66例で、最新の調査での累積5年生存率は80%以上であり治療効果の手応えを感じております。
以下のような研究を行っています。

a. 最大径20mm以上の大腸腫瘍に対する各種内視鏡切除手技の局所根治性・偶発症に関する多施設共同研究
b. StageⅢb大腸癌に対する術後補助化学療法としてUFT/Leucovorin+Oxaliplatin併用療法のFeasibility試験
c. 大腸癌・同時性肝転移症例に対する術前、術後mFOLFOX6療法の有用法と安全性の検討
d. 治癒切除不能大腸癌に対するUFT/LV併用癌ペプチドワクチン療法の第一相試験
e. 下部直腸癌に対する術前化学放射線療法の有効性についての検討
f. K-RAS野生型切除可能大腸癌肝転移に対する術後補助化学療法mFOLFOX6と周術期化学療法mFOLFOX6+セツキシマブの第Ⅲ相ランダム化比較試験
g. 再発危険因子を有するStageII大腸癌に対するUFT/LV療法の臨床的有用性に関する検討
h. 大腸癌肝転移における抗癌剤効果規定因子に関する研究
i. 大腸ステント他施設共同前向き安全性観察研究
j. Niti-S大腸ステント他施設共同前向き安全性観察研究
k. 肛門近傍の下部直腸癌に対する腹腔鏡下手術の前向き第II相試験
l. 直腸癌に対するTAMISの導入
m. 大腸癌におけるOSNA®法(プール法)によるリンパ節転移検査の妥当性
n. 減圧を要するfStageⅡ/Ⅲ閉塞性大腸癌に対する術前大腸ステントの意義に関する研究
o. 5-アミノレブリン酸による大腸癌腹膜播種の腹腔鏡診断に関する臨床研究
p. 大腸癌術後再発におけるリスク変動に関与するバイオマーカーの検索
q. 細胞シート工学を用いた直腸癌術後縫合不全予防治療の開発
r. StageⅡ/ⅢおよびCROSS1/2の閉塞性大腸癌に対するBride to Surgery(BTS)
大腸ステントの長期予後に関する多施設共同無作為化臨床試験(COBRA Trial)
s. 直腸癌に対するDaVinci手術による機能温存に関する臨床研究
t. 直腸癌側方リンパ節転移MRI診断能に関する研究

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>診療グループ紹介

【診療】

有泉俊一

肝胆膵グループは、山本雅一教授と江川裕人教授を中心に肝胆膵疾患でお悩みの患者様の治療をしています。肝臓、胆道、膵臓の病気でお悩みの患者様。当施設に一度相談にきませんか?当施設は、難しいと言われる肝胆膵領域の手術を世界で最も安全に行っている施設の一つです。肝癌、胆道癌、膵癌と診断された患者様はもちろん、症状で苦しんでいる良性疾患の患者様、胆嚢結石、膵炎の患者様も是非相談にきてください。手術ができないと言われた患者様の治療も行っています。例えば高齢だから無理、心臓や肺などに持病があるから手術は危険、透析しているから無理、癌が大きすぎて手術できない、血管が近いから手術は難しい。もしお近くの病院でこのように言われた場合も安全に手術をしています。他施設では手術が難しいといわれている患者様も受け入れています。肝臓の手術は胃や大腸などの手術と比べると死亡率が高く危険な手術です(術後死亡率1〜4%)。しかし当院の死亡率はこの10年間で0.5%でした。最近はほとんどの患者様が70歳代、80歳代です(最高93歳)。手術後に寝たきりにならないよう、術後体力が落ちないよう安心して手術を受けていただいています。肝臓手術は、これまで5000例に達し本邦一の肝切除症例数です。その多くが肝門部グリソン鞘一括処理法による系統的肝切除です(図1)。この手法は難しい肝切除をより簡単に安全に行う方法です。現在では合併症が減少(約10%)し死亡例はほぼありません。近年はより体に負担の少ない腹腔鏡肝切除も安全に行っています(図2)。肝移植は、消化器内科の医師とともに治療に当たっています。劇症肝炎、肝硬変肝不全の患者様でお困りでしたら一度相談に来て下さい。生体肝移植、脳死肝移植数は70例以上に達し、その短期成績は世界でもトップクラスです。ドナー手術は傷が小さめですが安全に施行しています。他にも、無痛(全身麻酔下)ラジオ波焼灼術(年間約50例)、肝動脈塞栓術(年間約200例)、分子標的薬による化学療法、放射線治療、外科病理診断など総合的診断と治療が可能であり再発時にも安心して様々な治療を受けられます。何よりここに来てよかったと多くの患者様が笑って退院していただいています。

【教育】

外科専門医指導医、消化器外科専門医は取得可能です。肝胆膵高度技能専門医を目標にしています。これは2011年に世界で初めて誕生した技術認定による専門医制度です。現在までに約300名が取得し女子医大からは本邦で最も多く5名の肝胆膵高度技能専門医が誕生しています。その他にも移植認定医、内視鏡外科技術認定医の取得も目標にしています。また海外から多くの先生が留学にこられ手術や研究、PhDの取得に頑張っています。高度技能専門医に興味があり取得したいと思っている先生(初期研修後でも後期研修後でもOKです)がいたら是非相談にきてください。

【研究】

<2020プロジェクト 肝臓手術5000例>

2020年までに20%改善させよう(2020プロジェクト)として下記を目標にしています(図3)。

①高度門脈腫瘍栓肝細胞癌の生存率を20%向上させる
②安全な肝切除のため出血量、輸血率、合併症を20%減少させる。
③肝細胞癌切除例全体の生存率の改善させる(10〜20%)。
④肝内胆管癌リンパ節転移例の術後成績を20%改善させる。

図4:肝癌が心臓内にまで進行しているため余命3ヶ月と言われた患者様です。当院で肝切除と心臓手術を同時に安全に行いました。患者様はその後2年生存し、念願の娘さんの結婚式に参加されました。

図5:肝血管腫が巨大(30cmと15cm)のため、腹満が強く、歩行困難を呈していました。カテーテル治療が無効のため来院。症状の原因である30cmの肝血管腫を摘出しました。歩行困難であった患者様は術後3年目にフルマラソンに完走しています。

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移植

>診療グループ紹介

【診療】

移植グループは肝臓グループの派生グループとなります。肝臓移植に対しては江川裕人教授を中心に肝臓グループの班員が担当しております。2011年に新たなプログラムとして肝移植を再開してから2019年までに生体肝移植を87例、脳死肝移植を15例施行しており、合わせると100例以上の肝臓移植手術を手がけております。

【2019年の症例】

2019年は10例の移植手術を施行しおります。対象疾患も劇症肝炎の様な急性疾患や血液型不適合移植など様々なバリエーションの症例を施行しております。

2019年は手術時間及び出血量も減少させる事ができました。今後は在院日数の減少を目指したいと思います。

【成績】

移植肝の1年生着率は90%以上を示し5年生存率は84.1%と高い成績を維持しております。

累積生存率

2019年は手術時間及び出血量も減少させる事ができました。今後は在院日数の減少を目指したいと思います。

【教育】

移植グループは肝臓グループの班員が担当しておりますので、移植手術のみならず、肝胆膵の高難度手術を手がけております。また肝臓移植においてレシピエント手術を経験する事で血行再建を伴う肝胆膵の高難度手術を修得出来るようになると考えて教育にあたっております。現在の目標としては、移植認定医・消化器外科専門医・肝胆膵外科高度技能専門医取得にあります。

【研究】

AMEDでの移植免疫に対する新しい免疫寛容法の研究に携わっております。
2019-2020年は
「多機能幹細胞を用いた免疫賦活化療法による新規肝炎/肝癌治療の開発研究」班
「臓器移植を革新する免疫プロファイリングによる個別化医療の開発」班
「誘導型抑制性T細胞を用いた臓器移植における免疫寛容誘導を目指した第1/2相多施設共同医師主導治験」班
の3つの研究班において活動しております。今後は、移植後患者に対して免疫寛容の誘導する
に対し挑戦していきたいと思います。

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膵胆道

>診療グループ紹介

1. 切除数と特徴

膵・胆道腫瘍に対する手術を年間100例程度, 胆石症, 膵・胆管合流異常症, 先天性胆道拡張症などの良性胆道疾患手術を年間100例強、合わせて年間計200-230例程度の手術を行っています。

2. 腹腔鏡手術

2020年度よりロボット支援下膵手術を導入予定です。

腹腔鏡での胆嚢摘出が広く普及し全国的に行われておりますが、近年、膵臓の悪性度の低い腫瘍においても、徐々に腹腔鏡手術が導入されつつあります。腹腔鏡下手術は、傷が小さいため整容性に優れており、からだへの負担を減らすことで早期離床、早期の社会復帰を目指した治療です。開腹手術に比較して深い術野の観察が容易であるという特徴も有しています。しかしながら、触診を行うことが困難であるため、状況により術中超音波などを併用し、手術を行う必要があります。当科では、腹腔鏡下手術を年間70-90例、膵腫瘍に対する鏡視下手術を現在までに44例行っています(図2)。

3. 成績

図3 N0M0R0 肝門部胆管癌

図5 膵頭部癌

図4 Stage 4b 胆嚢癌

図6 膵体尾部癌

(図4)、膵癌(図5, 6)の成績を示します。肝門部胆管癌や胆嚢癌に対しては, R0切除や周術期成績の向上と術後補助化学療法により、膵癌でも術前治療,R0切除や周術期成績の向上,術後治療により, 長期成績のさらなる向上を目指しています。

4. 教育

スタッフの4名が医療練士および初期研修医の診療および研究指導, 医学部および看護学部の医学教育にあたっております。入局後の後期研修では、まず、消化器外科領域全般について術前検査や周術期管理などを学びます。最終的には、対処が容易でない重度の併存症の方々における術前・術後管理の習得まで目指します。膵・胆道グループだけでも外科手術が年間200例程度あるため、豊富な症例を経験することができます。また、外科にいながら多くの検査(膵・胆道ドレナージや門脈塞栓術)を行うことができるようになります。
日本外科学会、日本消化器外科学会、日本消化器内視鏡学会、日本膵臓学会、日本胆道学会などの専門医・指導医、日本肝胆膵外科学会の高度技能専門医、日本内視鏡外科学会の技術認定医の取得を目指します。

5. 研究

2020プロジェクトして「膵癌と胆道癌の生存率を20%向上させる」を掲げ、研究を続けています(下記参照)。肝門部胆管癌の治療成績については、累積5年生存率がN0M0R0 (リンパ節転移なし, 遠隔転移なし, 根治切除) で約60%と成績の向上を認めております。

以下のような研究を行っています。
多施設共同研究
・肝胆道系悪性腫瘍の高感度診断システムの開発
・膵臓腫瘍の分子病理学的解析による新規分子診療標的の同定
・分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の前向き追跡調査
・Epidemiological population study of periampullary cancers; Korea-Japan-United States cooperative project
・進行胆嚢癌切除例における予後不良の因子の検討-多施設後ろ向き観察研究-
・JCOG1113:進行胆道癌を対象としたゲムシタビン+シスプラチン併用療法(GC 療法)とゲムシタビン+S-1併用療法(GS療法)の第Ⅲ相比較試験
・膵・消化管および肺・気管支・胸腺神経内分泌腫瘍の患者悉皆登録研究
・膵癌の早期診断確立のための実態調査
・全ゲノム配列解析・網羅的遺伝子発現解析による胆道腫瘍の遺伝子異常の解明
・網羅的ゲノム解析 消化器神経内分泌腫瘍の原因解明と新規診断・治療法の開発
・家族性膵癌登録 日本国内の家族性膵癌家系における膵癌発生頻度の検討
・微小浸潤を伴う膵管内乳頭粘液性腫瘍の病期分類確立のための国際多施設共同研究
・早期ステージ膵臓がんにおけるゲノム解析による新規分子診療標的の同定
・分子ネットワーク解析による膵臓胆道腫瘍新規分子診断治療標的の同定
・膵臓癌の診療向上のための分子遺伝学的および分子疫学的研究
・十二指腸癌外科的切除症例の臨床病理学的因子と予後に関する研究
・膵切除における抗血栓薬服用歴が術後経過に及ぼす影響に関する研究
・残膵癌における先行膵癌との分子病理学的および臨床病理学的検討
・良性~低悪性度膵腫瘍に対する腹腔鏡下尾側膵切除術の際の脾温存術と脾合併切除術の比較検討;Propensity score matching解析を用いる
・腹腔鏡下膵体尾部切除術における術前難度評価スコア(difficulty score)の有用性に対する検証研究
・腹部救急認定医・教育医制度認定施設における急性虫垂炎に対する治療成績多施設共同後ろ向き研究
・Benchmark4PHC

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ロボット支援手術

>診療グループ紹介

手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」

直腸癌に対するロボット支援下手術

近年、大腸癌手術では腹腔鏡下手術が普及していますが、大腸癌のなかでも直腸癌の手術は未だに難易度の高い手術の一つとされています。特に直腸は、骨盤の深部に存在し、膀胱機能や性機能を司る重要な神経に囲まれており、解剖学的に複雑なところに存在します。そのため、外科医の手技の精度によって神経を正確に温存させることは患者様のQOL(生活の質)に直結することになります。そのような背景から当科では2017年2月から直腸癌に対するロボット支援下手術を臨床研究として導入しました。2018年4月からは保険収載となり施設要件を得て、直腸癌に対するロボット支援下手術の経験を60症例以上有します。

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上:神経を温存しながら側方靱帯を切離
下:側方リンパ節郭清もとてもやりやすい

手術支援ロボットについて

ダ・ヴィンチ外科手術システム(intuitive Surgical社)は、より複雑で細やかな手術手技を実現とすることを目的として米国で開発されました。従来の腹腔鏡下手術においては鉗子(腹腔鏡下手術における外科医の“手”となるもの)の関節が少ないため手術操作の可動性の制限があることや、2次元モニターを用いるため空間認識が困難であることなどの課題がありました。ダ・ヴィンチ外科手術システムでは鉗子の先端が360度回転可能なため、自由度の高い手術が可能です。また、3次元モニターによる正確な画像情報の取得が可能となり、空間認識の困難さに関しても充分改善されました。

当院では、ダ・ヴィンチ外科手術システムが2011年より導入され、さらに2018年からは最新機種であるda Vinci Xi Surgical Systemの3台体制で行っています。またintegrated table motion機能(ペイシェントカートをドッキングしたまま体位を変更できる)のある手術台も所有しています。2018年に消化管癌(食道・胃・直腸)が保険収載されました。当院では直腸癌(60例以上)と胃癌(50例以上)が導入され標準的に使用されています。年内に食道・膵臓に対するロボット支援下手術も開始する予定となっています。

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上:ダ・ヴィンチ外科手術システム
下:多関節機能を有した自由度の高いインストゥルメント

ロボット支援下手術を希望される患者様へ

直腸癌のロボット支援下手術は腹腔鏡下手術と同様に保険診療として行われており、患者様への負担は変わりません。術者はロボット支援下手術・腹腔鏡下手術に十分な経験を持ち(日本内視鏡外科技術認定取得医師)、ダ・ヴィンチ支援手術教育プログラムを修了しライセンスを取得した医師となります。ロボット支援下手術について詳しい説明をお聞きになりたい患者様や手術希望の患者様は下記問い合わせ先へご連絡下さい。

[画像の説明]
da Vinci Xi Surgical System

お問い合わせ窓口

大木岳志 東京女子医科大学 消化器外科
電 話:03-3353-8111(代表)
E-mail: ohki.takeshi@twmu.ac.jp

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再生医療

>診療グループ紹介

診療内容

口腔粘膜上皮細胞シート 再生医療グループでは、本学先端生命医科学研究所と共同で、消化器領域における再生医療の研究を進めています。
当科では、早期食道癌の内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)後の食道狭窄に対し、患者さんの自己口腔粘膜組織から作製した細胞シートをESD後の潰瘍面に移植することで、食道を再生させ、食道狭窄を抑制するという新たな治療法を世界に先駆けて開発しました。

すでに本法における臨床応用を10例行い、安全性と良好な成績を報告しました(Ohki:Gastroenterology.2012)。
この先進的治療法は、2010年12月26日に放送されたTBSの「夢の扉」や2011年1月10日放送されたNHKの「プロフェッショナル~仕事の流儀~」にも紹介されました。

現在、国内では長崎大学病院と共同で、スーパー特区制度を用いた空輸による細胞シート治療、ノーベル生理学・医学賞を選定する施設であるスウェーデンのカロリンスカ研究所と共同で、バレット早期食道癌のESDやラジオ波焼灼療法(RFA)に応用する細胞シート治療を開始しています。
新しく「再生医療推進法」(平成26年5月11日公布)、改正薬事法(医薬品医療機器法)、再生医療安全性確保法(再生医療新法)(平成26年11月27日公布)が成立し、再生医療が条件・期限を付して早期に承認可能となったため、速やかに患者さんに提供できるように臨床研究を推進していく予定です。

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