東京女子医科大学消化器病センター
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食道癌
 消化器病センターは、わが国の食道癌手術創始者である故中山恒明名誉所長が開設されました。40年以上経過した現在でも、本邦における食道癌治療の主要施設の1つとして在り続けています。
 旧来から、食道癌は手術だけで制御することが困難であるという認識から、術前の放射線療法が行なわれ、また日本臨床腫瘍グループ(JCOG)に参加するなど、集学的治療を推進してきました。
 そのため放射線科や当科の化学療法チームとの連携が密にとられています。
 手術に関しては、伝統的に手術時間が短く、出血量も少く輸血はほとんどの症例で必要としていません。
 そしておおむね手術後2-3週間で退院することが多いです。

症例数
 年間100人以上の食道癌患者を手術中心に治療しています。手術以外の内視鏡的治療や抗がん剤(化学療法)、抗がん剤と放射線(化学放射線療法)なども、放射線科や化学療法チーム・内科と連携して行っています。
 豊富な経験の下、食道癌のあらゆる状況に対処できる、患者様にとっての頼りになる専門科と自負しております。

検査
 当院では食道癌患者様に対する精密検査は以下のようにたくさんありますが、もちろん患者様ごとに必要な検査が異なり、すべて必要というわけではありません。
1)食道内視鏡検査 胃カメラと同様ですが、食道を染めるルゴール染色をします。
2)生検組織診断 内視鏡で生検した組織を病理検査にまわし確定診断します。
3)食道造影検査 バリウムの検査で飲めない場合は鼻からチューブを入れます。
4)頸部・
  腹部超音波検査
食道癌のリンパ節転移の有無を主にみます。
5)CT検査 食道の状況と頸部から腹部まで広い範囲のリンパ節や肺・肝をみます。
6)超音波内視鏡検査 内視鏡の先に超音波装置をおき食道の状況とリンパ節をみます。
7)PET検査 癌はグルコースの取り込みが多いため、全身の転移部位が陽性に出ます。
8)気管支鏡検査 気管や気管支は食道に近いため進行すると影響があります。
 これらの精密検査によって病期診断(I〜IV期)を行い、これを臨床病期と呼びます。それにより次項のように治療法の選択が行われます。
 しかし、以上のような精密検査を行っても病期が正しく診断できているのは約70%とされています。

治療法の選択
 食道癌の治療法は内視鏡的治療・手術・化学放射線療法があり、病気の進行度合いや患者さんの全身状態により適応が決定されます 。
 ※食道癌症例数を参照ください。

 病気の方からの治療の適応は、食道癌治療ガイドライン(日本食道学会編)に基づき次のようにしています。

T1:上皮内癌(Tis)、粘膜癌(T1a)、粘膜下層癌(T1b)
 上皮内癌(Tis)や粘膜癌(T1a)に対しては、内視鏡的粘膜切除(EMR)・粘膜下層剥離術(ESD)・レーザー焼灼術をおこなっています。
 また、これらの治療を粘膜下層癌(T1b)にまで適応しようしており、切除した病理標本の所見にて治療を追加する必要があるかどうかを見極めています。
 粘膜下層癌は手術の適応とされてきましたが、リンパ節転移がない症例は抗がん剤と放射線でも治癒できることがわかってきました。
 日本臨床腫瘍グループ(JCOG)で比較臨床試験が予定されていますが、現在当科では患者様の希望により両治療のメリットとデメリットを十分にご説明し、選択していただいております。

T1-4、N1(II、III期)

 外科手術が標準治療とされています。手術は頸部・胸部・腹部のリンパ節郭清を行う3領域郭清を行う一方、縮小開胸開腹術式や胸部下部食道癌に対して中下部食道を切除し胃管と吻合するなど手術術式の縮小を図っています。
 抗がん剤と放射線療法を同時に行う化学放射線療法は、治癒する可能性があります。化学放射線療法をしてみて治らなかったら手術をするという方法もあります。
 化学放射線療法後の手術はサルベージ手術とよばれ、手術の死亡率や合併症の発生率がやや高まります。これは患者様の体が弱っていることや、化学放射線治療の影響で食道を剥がしにくくなり、また縫合不全が多いためです。

M1(IV期)
 遠隔転移がある症例で、化学療法や化学放射線療法の対象です。腹部や頸部の食道から離れたリンパ節や肺・肝などの臓器に多数転移がみられる場合は、化学療法が中心となります。
 食事が通らないほど食道が狭くなっている場合は、化学放射線療法を行っています。

治療の実際
1)内視鏡的治療
 食道癌はルゴール染色で染まらないため不染帯とよばれ、それを目標にチューブやキャップという装置を使用して内視鏡で食道粘膜を切除する方法です。
 合併症に出血や穿孔がありますが、当院ではほとんど起こっておりません。また、大きく切除しなければならない場合、食道が狭くなることがあります。すぐに食事をすると危険なので、4〜5日以上の入院が必要です。

2)手術

 胸にある食道を切除し、胃をもちあげて残った頸部食道とつなぐ手術が標準的です。食道癌はリンパ節に転移していることが多く、胸と腹および頸部を切りリンパ節を取り除く3領域郭清を行っています。
 食道癌手術は患者様へのダメージが大きいため、それを縮小しようと下部食道癌では胸と腹だけで行ったり、鏡視下手術を導入しています。
 順調なら手術後2〜3週間で食事も食べられるようになり、退院となります。

3)化学放射線療法

 抗がん剤と放射線療法を同時に行う治療で、放射線療法単独より効果が高いことがわかっています。
 入院していただき、同じ病棟である放射線科の医師と連携し治療を行っています。
 約4-6週間かかる治療で、可能な方には通院していただいています。化学放射線療法後に再発した場合、可能なら手術(サルベージ手術)を行っています。

治療成績
 治療適応の深達度(T1-4)に基いた手術による食道癌以外での死亡を含めた生存率は図のようになります。
食道癌切除例の深達度別生存曲線 また、1992〜99年に手術をうけた患者様554名の病理学的検査でのTNM分類による病期(Stage)で、食道癌以外での死亡を含めた5年生存率はStageI:81%、StageII:52%、StageIII:27%、StageIV:5%でした。
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 医療関係者の方へ
食道グループ
 故中山恒明名誉所長が消化器病センター設立した当初から、食道癌治療の有数の施設であり、以来40年以上その伝統を維持しています。
 食道グループには遠藤光夫東京医科歯科大学名誉教授、山田明義名誉教授、井手博子名誉教授、吉田操先生、江口礼紀先生などが在籍され、活躍されていました。
 当センターには、国際食道疾患会議(ISDE)の日本支部や、食道癌集学的治療研究会の事務局があり、また他の各種学会でも主要施設の1つとして役割を果たしております。そして、日本臨床腫瘍グループ(JCOG)の食道がんグループのメンバーであり、患者登録や班会議に積極的に参加しております。

診療
 食道癌を中心に食道アカラシアや食道裂孔ヘルニアなどの良性疾患も診断・治療しています。診断技術はグループ医師全員がもつ必要があり、とくにCT画像はくわしく読影しています。
 また、当院にあるPET(PET/CT)も、最近食道癌に保険適応となったため積極的に活用しています。治療は内視鏡的治療、手術、化学療法、化学放射線療法などすべてを同じ病棟に入院していただき施行しています。
 放射線科は同じ病棟となっているため、密に連携して行っています。化学療法は化学療法グループと相談して行っています。ICUを含め、常に10〜20名の食道疾患の患者様が入院され、診療を行っています。

研究
 研究分野は伝統的に内視鏡分野、画像診断分野、病理分野の3つに分かれてきましたが、現在ではその領域に固執していません。以下に現在行っている研究を紹介します。
1)臨床研究 JCOGの食道がんグループに参加しており、臨床研究Study9907, 0303に登録しています。
2)化学放射線療法 根治的化学放射線療法と術前化学放射線療法に分けられ、後者は進行食道癌(T3-4)に対して化学療法と放射線(50.4Gy)を行い、必要なら手術をするプロトコールを行っています
3)内視鏡的治療 EMRまたはESDをsm癌に適応拡大し、必要なら追加治療をするプロトコールを施行中。
4)微小転移 リンパ節や末梢血・骨髄中の微小転移を検出する研究を行っています。
5)化学(放射線)療法
  感受性
化学療法班と共同で腫瘍組織のRT-PCR法やMicroarray法での遺伝子発現で感受性をみます。
6)GERD・逆流性食道炎 食道内圧計およびpHモニターがあり、とくに食道癌術後の食道炎について研究しています。
7)免疫機能・栄養および
  Quality of Life(QOL)
手術や化学放射線療法後の免疫機能・栄養やQOLについての研究をしています。
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