東京女子医科大学 東医療センター 日暮里クリニック

HOME

診療科案内

間脳下垂体外来

2012年9月から間脳下垂体外来を始めました。曜日は第2、3、4週の金曜日午後1:00 pmからです。他院にもこのような専門外来はありますが、当日暮里クリニックにおける特徴は、我が国では、非常に少ない女性専門外来あることより、これまでにはないよりきめ細かい診療ができることです。
 それでは、間脳下垂体とはどのようなことをしているのか、簡単に説明します。間脳と下垂体は脳の一部ですが、伴にホルモンを出して、身体の機能を維持するところです。ホルモンを出す臓器は、甲状腺、副腎、性腺等がありますが、間脳と下垂体はホルモンを出す臓器としては、最も高位に位置しており、これらのホルモンを出す臓器全ての機能をコントロールしています。神経の中枢は脳であることは周知されていますが、間脳と下垂体はホルモンの中枢であるといえます。
 次に、間脳と下垂体が障害されるとどうなるか考えてみましょう。間脳と下垂体は伴にホルモンを出しているので、ホルモンが出過ぎた場合と、低下もしくは出なくなった場合とで、症状が変わってきます。厚生労働省のホームページでは、間脳下垂体機能障害を以下の8つに分類しています。プロラクチン分泌異常症、ゴナドトロピン分泌異常症、抗利尿ホルモン分泌異常症、下垂体機能低下症、クッシング病、先端巨大症、下垂体性甲状腺刺激ホルモン分泌異常症の8つです。ここで、各疾患について特徴的な症状、治療について少し述べてみます。

プロラクチン分泌異常症

視床下部という間脳の一部に作用する薬物やプロラクチン産生腫瘍により、高プロラクチン血症になると、女性では生理不順や生理がなくなる、不妊、妊娠出産してないのに乳汁分泌がみられます。男性では性欲低下やインポテンスが特徴的です。低下する場合は、プロラクチンが単独の低下ではなく、全ての下垂体ホルモン低下の一症状となります。治療は、薬物性の場合は、原因薬物の中止することです。腫瘍の場合は、ドパミン作動薬(カベルゴリン)という薬を週に1〜2回内服が一般的です。

ゴナドトロピン分泌異常症

ゴナドトロピンとは、性腺刺激ホルモンのことで、黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンの2種類があります。出過ぎる場合は、ほぼ腫瘍によると考えられます。小児では、性早熟を来します。閉経前の女性では、生理不順、無月経、乳汁分泌で見つかることがありますが、女性では40〜50歳台に多いといこともあり、更年期障害と思って気付かないこともあります。男女比では、男性の方に多いのですが、性欲低下、インポテンス、乳腺腫大、乳汁漏出、不妊などが特徴的です。治療は手術が第1選択となります。

抗利尿ホルモン分泌異常症

抗利尿ホルモンは、視床下部で作られ、下垂体後葉から分泌されます。このホルモンは、腎臓に作用して尿量を調節しています。よって、出過ぎると、身体の水分が過剰になり、血液が薄まってしまうことになります。低下もしくは出なくなった場合、中枢性尿崩症と言います。尿量が増加するので、何回もおしっこに行くことになります。すると、身体の水分量が低下するので、のどが渇き、水をがぶがぶ飲みます。原因は、脳腫瘍、外傷、脳血管障害、下垂体の炎症などが、原因で尿崩症を起こすと言われていますが、原因不明の場合もあります。治療は、出過ぎた場合は、抗利尿ホルモンを補充することになります。

下垂体機能低下症

何らかの原因で、下垂体ホルモンが低下あるいは出なくなった場合に起こります。下垂体腫瘍、頭蓋咽頭腫、胚細胞腫瘍などの腫瘍性疾患が半分以上を占めています。その他は、シーハン症候群、自己免疫性下垂体炎、外傷、術後にもみられますが、原因不明のものもあります。治療は、不足しているホルモンを補充することにより寛解状態となります。

クッシング病

副腎皮質刺激ホルモン産生腫瘍により、副腎皮質刺激ホルモンが出過ぎた場合に起こる病態をクッシング病と言います。腹部が肥満して、手足は太らない中心性肥満、顔が満月のように丸くなる満月様顔貌、頸の付け根に脂肪が付いた水牛様脂肪沈着、にきび、多毛、筋力低下、生理不順でみつかることや、精神障害でみつかることもあります。治療は、手術が第1ですが、放射線治療も行われます。

先端巨大症

殆どが、下垂体の成長ホルモン産生腫瘍が原因起こります。まれに下垂体以外の成長ホルモン産生腫瘍により起こります。症状は、特徴的で、成長ホルモンの過剰により、手足が太くなり指輪や靴のサイズが合わなくなります。容貌も鼻、唇が大きくなり、顎が出っ張ってきます。舌も大きくなる巨大舌となり、睡眠時無呼吸症候群がみられることもあります。これの変化は、徐々に進行するので、家族や本人すら気付かず、加齢による変化と思ってしますこともあるくらいです。閉経前の女性では、当然、生理不順もみられます。その他に、糖尿病や高血圧の合併率も高くなります。また、腫瘍や癌の合併率も高くなります。このため、治療ないでいると生命予後が悪くなります。他の下垂体腫瘍と比べて放っておくと、大変なことになるということです。治療は、日本では、手術が第1選択となります。その他には、薬物療法や放射線治療もあります。

下垂体性甲状腺刺激ホルモン分泌異常症

甲状腺刺激ホルモンが出過ぎる場合の原因は、下垂体性甲状腺刺激ホルモン産生腫瘍が多いと言われています。この腫瘍は全下垂体腫瘍中、以前は1%以下であると言われていましたが、最近のデータでは1〜2%を占めるようになってきました。それは、症状が殆どない症例からバセドウ病と同じような症状を呈する症例まで幅があること、バセドウ病と診断されてしまい、下垂体腫瘍が見逃されていることもあるようです。反対に、甲状腺刺激ホルモンが低下あるいは出なくなると、無症状から甲状腺機能低下症と同じような症状を示すものまでやはり幅があります。治療は、腫瘍がある場合は、やはり手術が第1選択です。反対に、ホルモンが低下ないし出ない場合は、甲状腺ホルモンを補充することになります。
 また、下垂体近傍には視神経もあり、この付近にできる腫瘍としては、下垂体腺腫の他に、頭蓋咽頭腫、胚細胞腫、ラトケ嚢胞、神経膠腫、髄膜腫、類上皮腫、上皮腫、脊索腫、奇形種等があります。視神経は眼と脳とを繋ぐ神経です。この神経が圧迫されると、視力障害、視野障害を起こします。よって、ホルモンに異常がみられなくても、視力・視野障害の原因を調べてみると、下垂体近傍に腫瘍がみつかることもあります。これらの腫瘍が視神経を圧迫し、視力・視野障害を起こしている場合、多くの場合、外科的治療(手術)が必要になります。診断は、症状、血液検査、ホルモン値測定の他、レントゲン、CT、MRI等による画像診断を組み合わせて行います。これらは、殆ど全てが外来でできる検査です。

それでは、どのような症状がある場合に、外来受診をしていただくのがよいかというと、次のようになります。視力・視野障害が見られる場合、顔貌の変化(顎やおでこが出っ張る)と手足が太くなる、手足が細い割に、顔・体幹が太る、バセドウ病と診断されているが、治療が上手くいかないか不安がある場合、尿量のコントロールが付かず、おしっこが大量に出て、のどが渇き水をがぶがぶ飲んでしまうような場合、以上は男女に関係なく見られる症状です。次に、女性では、生理不順、無月経、不妊、妊娠・出産してないのに乳汁分泌がある。男性では、性欲低下、インポテンスで、泌尿器科を受診したが、原因がよく分からない場合です。何か思い当たるような症状があれば、外来に受診して下さい。

脳神経外科疾患について

以下に代表的な3つの疾患(下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫、ラトケ嚢胞)について解説します。

下垂体腺腫(MRI画像)

i601.png

画像の白く見える部分は正常下垂体で、造影剤で染まっています。やや黒くみえる部分が下垂体腺腫(成長ホルモン産生腫瘍)です。一般に脳腫瘍は造影剤でよく染まりますが、下垂体腫瘍は正常下垂体よりも染まりが悪いのが特徴です。症状としては、小児期では巨人症、成人では末端肥大症となります。治療 は、手術が第 1 選択です。この程度の大きさの腫瘍は微小腺腫であるので、鼻孔経由で顕微鏡や内視鏡を使用して、腫瘍部分のみを摘出することが可能です。

頭蓋咽頭腫 (MRI画像)

i602.png

正常下垂体は、下方に圧迫されています。腫瘍は中がやや黒く周囲がやや白く みえます。白矢印は第 3 脳室で、腫瘍は脳の中にめり込んでいるのが分かります。こうなると、鼻の穴からだけでは、腫瘍を取りきることができないので、 前頭部を開頭して腫瘍摘出することが必要になります。ここまで腫瘍が大きくなると、開頭による腫瘍摘出が必要になります。

頭蓋咽頭腫の特徴

約 7 割がMRI画像のように、腫瘍が大きくなってからみつかります。 小児期に見つかることが多いですが、成人になってからも発症するので全年齢層に観られる腫瘍です。

症状

視神経圧迫による症状
これが一番多い症状で、両耳側半盲といって、視野の外側が見えにくくなります。
ただし、MRI画像のように、腫瘍が左右非対称に大きくなるので、視野障害も不規則になります。
下垂体圧迫による症状
小児期に多い症状で、下垂体全体の機能が低下するので、汎下垂体機能低下症という症状を起こしてきます。二次性徴がみられず、身長も伸びず下垂体性小人症となります。
成人では、疲れやすい、低血圧、無月経、脱毛、 薄く青白い皮膚、インポテンツなどの症状があります。
視床下部圧迫による症状
尿崩症といって、薄い色の尿が大量にでるので、大量の水を欲しがるようになり、いわゆる多飲多尿という症状がみられます。傾眠、低体温、電解 質異常などの症状も視床下部の症状です。
成人では、精神症状や性格異常 のため精神疾患と間違われることがあります。
第 3 脳室圧迫症状
第 3 脳室を圧迫すると、水頭症や頭蓋内圧亢進症状がみられます。お示ししているMRI画像でも水頭症を起こしています。治療手術が第 1 選択となります。
手術でできる限り腫瘍を摘出します。腫瘍が小さければ、全摘出が可能ですが、大きくなって脳と癒着すると、全摘出は困難と なります。大きい腫瘍に対して無理をして全摘出を行って後遺症が残り、その 後、辛い人生を送らなくてはな初らないこともあります。回手術では、無理をせず、症状を改善できる程度の摘出に留めて、その後、外来で経過観察を行うこともあります。
再び大きくなった時、再手術か放射線治療を行います。

治療

手術が第 1 選択となります。手術でできる限り腫瘍を摘出します。腫瘍が小さ ければ、全摘出が可能ですが、大きくなって脳と癒着すると、全摘出は困難と なります。大きい腫瘍に対して無理をして全摘出を行って後遺症が残り、その 後、辛い人生を送らなくてはならないこともあります。初回手術では、無理を せず、症状を改善できる程度の摘出に留めて、その後、外来で経過観察を行う こともあります。再び大きくなった時、再手術か放射線治療を行います。

ラトケ嚢胞 (MRI 画像)

i603.png

ラトケ嚢胞とは、頭蓋咽頭腫とは異なり非腫瘍性の嚢胞で、症状を出すことは 稀ですが、嚢胞が大きくなって下垂体や視神経を圧迫すると症状を出します。 最近は、頭痛精査などで MRI を撮ることも多くなったため、偶然みつかること もあります。画像の様に黒く見える部分がラトケ嚢胞です。嚢胞に出血したり、 貯留物が溜まると MRIの見え方がいろいろと変わります。手術は、鼻の穴を経由して、顕微鏡や内視鏡を用いて行います。無理に嚢胞を摘出しなくても、嚢胞の膜を破り、内容液を吸引するだけで症状がよくなります。手術で嚢胞の細 胞すべて摘出することは難しく、無理をすると下垂体機能不全をおこすこともあります。症状がない場合は、手術をすることは推奨されません。

i604.png

経鼻的下垂体腫瘍摘出術

図は、最近、主流となってきた内視鏡による下垂体腫瘍摘出術の方法を簡単に示しました。下垂体腫瘍は鼻孔から内視鏡を入れて蝶形骨洞という副鼻腔を経由すると、開頭しなくても、比較的容易に下垂体に到達することができます。 これまでは、顕微鏡を使用して手術をおこなってきましたが、最近は、内視鏡 下に手術を行うことが多くなってきました。しかも、比較的大きな腫瘍で、下垂体の収まっているトルコ鞍外に腫瘍が進展していても、経鼻的手術で腫瘍を摘出することが可能です。一般的に脳神経外科手術というと、開頭して脳に侵襲が加わることを心配されますが、下垂体手術は鼻から行うと、脳に全く触れることなく手術ができます。この手術方法は、この手術法を普及させた脳神経外科医ハーディの名を取って今でもハーディの手術と呼ばれています。余談になりますが、ハーディ先生は、1956 年カナダのモントリオール大学医学部を主席で卒業し、神経外科医となり、手術用顕微鏡とテレビ付き放射線透視装置を組み合わせて、鼻からアプローチする新しい手術法を1960年代に確立しました。 当初は危険、確実性がない等と非難されたそうです。50年以上経過して、手術用顕微鏡の代わりに内視鏡、放射線透視装置の代わりに手術用ナビゲーション が導入されましたが、基本的な手術方法は変わっていません。今でも行われているのは、安全性、確実性、低侵襲等の長所があり、少しずつではありますが 手術方法が進化してきたからです。

日暮里クリニック 脳神経外科 谷 茂

スタッフ紹介

職位氏名担当
助教 谷 茂