五十肩、肩こり外来

五十肩、肩こり外来

東京女子医科大学東医療センター整形外科
准教授 神戸克明: 毎週水曜日、金曜日午後要予約
TEL: 03-3810-1111

はじめに

 

五十肩の病態

肩関節の特徴は球関節であるため可動域が広く、日常生活で物を持ち上げる動作やスポーツで手を挙げる競技、例えば野球、水泳、バレーボールなどで非常に重要な役割を担う関節です。肩の運動メカニズムは非常に複雑であり、上腕骨と肩甲骨それぞれの微妙な動きが腕を挙げる動作につながっています。中でもインナーマッスルと呼ばれている腱板はその巧みな筋力バランスにおいて上腕骨を挙げるきっかけとなる力を発揮する大事な筋肉です。この腱が損傷して腱板断裂を引き起こします(図1)。

肩の中には上腕二頭筋長頭腱(力こぶのすじ)が入り込んで関節唇に移行しております。したがって重い荷物を持ち上げた時に肩が痛い場合、この関節唇損傷を起こしていることがあります。野球のピッチャーが投げる直前(コッキングフェイズから加速期)に肩痛が出る場合、上腕二頭筋長頭腱が付着している関節唇が剥離している場合があり、これを投球障害肩といいます。そのほかスノーボードなどで転倒して肩が脱臼すると、その後何度も脱臼を繰り返す、反復性肩関節脱臼があります。こうした肩は外傷が関係する疾患が多いですが、五十肩やリウマチなど怪我と関係なく起こる疾患もあります。

腱板断裂

中年以降の約10-30%に腱板断裂が認められるとされており、肩の疾患の中で最も大事な疾患がこの腱板断裂と考えられます。6割は男性、60歳台に多く、6割以上保存的治療が有効です。年齢とともに自然に切れるタイプもあり、切れても症状は4割しか出ないとされております。したがって早期診断と初期治療が大切とも言えます。腱板は4つの筋肉の腱から構成されており、棘上筋、肩甲下筋、棘下筋、小円筋です。それぞれの筋肉は肩の運動に大事な機能を果たし、棘上筋は外転、肩甲下筋は内旋、棘下筋と小円筋は外旋です。したがって腱板のうち棘下筋が切れると腕が外から挙げられなくなります。

五十肩の病態

腱板断裂の症状は主に夜間痛と筋力低下です。痛みで夜中に目が覚めたり、背中から見て肩甲骨のまわりの筋肉が細くなり腕を挙げる力が入りにくいこともあります。断裂のサイズで小(1cm以下)、中(1~3cm)、大(3~5cm)、広範囲断裂(5cm以上)と分けられます。大断裂以下は内視鏡で縫合しますが(図2)、広範囲断裂で70歳以上、変形性関節症のある場合は最近リバース型人工肩関節置換術を行います。

なぜ腱板断裂は起こるかについて発生メカニズムは解明されていません。外傷から損傷した腱板が時間の経過とともに筋肉で引き寄せられ断裂サイズが大きくなることが考えられます。しかし当科における研究ではメカニカルストレスから引き起こされる炎症性物質やコラーゲンを溶かす物質(MMP)が活性化されることを発見し、断裂した部位の軟化や変性に関係していることを報告しました(1)。当科ではこれまでに関節鏡視下腱板縫合術を200例以上行っており安定した成績を得られております(2)。

五十肩と肩こり

肩こりは日本において女性の示す症状の第1位であり(人口千人に対して約130人)、男性においては2位を占めています(国民衛生の動向2013)。「肩が凝る」という言葉は夏目漱石の「門」の中で最初に使われたという説がありますが、当然それ以前より肩こりはあったと考えられ、欧米でもstiff neckとして表現されています。しかし外国では保険制度の違いや、肩こりぐらいで病院に来る人は少なく整体に通う人が多いのです。一方、日本において肩こりは病院で診療され、リハビリ治療などに通院されるため見かけ上「肩こり」は日本人において多い割合となっています。しかしその原因と治療は様々であり、長期に症状が持続する疾患群として現在注目を浴びています(1-3)。 さて、当科で調べた、肩こり50人、平均58歳、女性76%、男性24%の調査の結果は以下の通りです。

 

    1・いつから肩こりがあるか? 平均10年前よりある
    2・どちらの肩がこるか? 両方60%、右27%、左13%
    3・いつ肩がこるか? 1日中が73%で最多
    4・肩こり以外で痛いところは? 63%に腰痛、20%に膝
    5・病気はほかにあるか? 22%視力障害、20%高血圧、9%顎関節障害、3%糖尿病、心臓病3%、43%なし
    6・今までにむちうちをしたことがあるか? 83%なし
    7・腕をあげると肩関節は痛むか? はい58%、 なし42%
    8・手のしびれはあるか? 16%あり、84%なし
    9・平均睡眠時間は? 6時間
    10・肩こりの治療をいままでに受けたことがあるか? 61%あり、39%なし
    11・肩こりの重症度と関係するのは睡眠時間視力障害、年齢だった。

すなわち肩こりは10年以上持続する長期疾患であり、両肩に多く、1日中症状があり、腰の悪い人に多いのです。ほかに視力障害や高血圧を伴う人が全体の40%をしめ、眼の疲れ、視力の悪い人などは肩こりしやすいと言えます。高血圧があると1日中肩こりや頭痛の原因ともなります。しかし、むちうちは純粋な肩こりの原因とはなりにくく、むしろ頚椎捻挫として扱われます。さらに、肩こりで手のしびれがでるひとは意外に少なく16%でありました。ところがここで注目すべきことは、肩こりの約60%は肩関節自体が痛くて腕が上げにくいということです。ここに五十肩が潜んでいるのです。

 

五十肩

五十肩と肩こりは基本的には別な疾患です。五十肩は肩が痛いだけでなく腕の動きの悪いこと、肩こりは首の周囲の痛みで首こりともいわれ頭や首のまわりが重く、だるくなります。五十肩は中高年で最近増加しておりまして、まさに現代病とも言われております。一般的に「たかが五十肩」と軽く見られる傾向があって、実はその中に重症化しやすいタイプを含んでいることがあり注意が必要です。接骨院や針灸などに通っても、なかなか治らなくて困っている人。リハビリをもう半年以上やっても一向によくならない人。そのような方に当科では肩関節外来を設置し、肩関節鏡視下手術により2-3泊入院で、小さな創で治療する方法をこれまでに500人以上行い良好な成績を得ております。毎月外来へはのべ400人程の「肩疾患」の外来患者さんを診察しております。患者さんからはとても満足の高い評価を受けております。全国から五十肩などで悩んでおられる方が来られ、精密検査をして以下のように治療を行なっております。

五十肩の具体的な症状

夜や朝方に肩が痛くて目が覚める。痛い方の肩を下にして眠れない。腕を横に伸ばすとピキッと激痛が走る。いいほうの腕と比べると痛いほうは腕が後ろに回せない。肩だけでなく二の腕や肘あたりまで痛い。手のむくみや握りがつらい。肩が常に重だるく、首や耳の後ろのほうまで重い感じがある。最近肩は痛いし血圧が高めである。肩が持続的に痛いと血圧が上昇してしまい、肩が治ると血圧が安定する患者さんもいます。

肩の痛い中高年の男性の約3割は糖尿病

五十肩は男性も女性も共に起こる病気ですが、その原因が違う場合が多いです。女性の場合、特発性といって50歳ぐらいに誘引なく朝おきたら痛いとかゴルフをやったあと痛くなったとか原因がわからないことが主です。しかしおそらく糖代謝異常や糖尿病の家族歴が関連していると思われます。時に両肩が痛くなることもあります。一方、男性は合併症として糖尿病がある人が当センターの調べで約3割もいることが判りました(3)。ですから肩の痛い中高年の場合必ず血液検査をして血糖値やヘモグロビンA1cという糖尿病の検査をします。そのほかに五十肩の原因として、肩の脱臼や骨折後数年たったものや、肝臓病、心臓病、乳癌の手術後などがあります。

五十肩の病態

五十肩は肩が痛いだけでなく肩の動きが制限される病気です。肩が痛いけれども腕の動きは問題ないものを肩関節周囲炎といい、腕が肩の高さまで上げられないものを拘縮肩といって五十肩を放置するとこの重症化した拘縮肩になります。これは全身麻酔をして完全に痛みをとってあげて肩を動かしても、関節の中で構造的に制限されて肩を動かすことはできません。すなわち、すでに痛くて肩を動かせないのではなくて、肩の関節を構成する関節靭帯が硬くなり動かせなくなっているのです。このように五十肩が発展して拘縮肩になってしまいますと、なかなかリハビリや針治療では治らず手術が必要になる場合があります。
それではなぜ五十肩は起こるのでしょうか?そのメカニズムについて説明します。肩の中には腱板という腕を挙げる大事な腱が上腕骨にくっついています。その腱板が骨に付着している数mmのところはとても血行が悪い場所で、50歳ぐらいになると肩の肩甲骨の突起(肩峰)に「骨のとげ」ができて、こすれやすく傷が治りにくい場所となっています。肩だけでなく膝なども関節の滑りが悪くなり、俗に言う油がきれた状態になっています。ですからヒアルロン酸製剤の注射を肩に打ちますと効果があるのです。

五十肩の病態

ステロイドの注射も炎症を抑えてよく効きますが、何度も行なうと特に糖尿病の人は肩の骨が溶けて壊れてしまったり、化膿性関節炎をひきおこしたりすることもあり注意が必要です。また糖代謝異常や糖尿病があると腱板のキズが治りにくくなり、中には腱板不全断裂となる場合もあります。こうした慢性的な炎症が肩の関節内に広がり、特に二の腕の付け根(上腕二頭筋長頭腱)が腱板周囲と癒着が起こり腕を外に動かしたり、後ろにやったりすることが困難になります(図3)。

リハビリを行なって肩甲骨の周囲の動きがよくなると肩の動きは一見代償されますが肩甲骨を押さえるとやはり腕の動きが悪いひとが多いです。これが一般的に五十肩は自然に治るといわれる所以ですが、痛みはよくなっても腕の動きが悪いのは残ってしまいます。当科ではリハビリの補助手段として肩関節鏡視下手術を行なって参りました。腱板のキズで癒着してしまった上腕二頭筋長頭腱周囲の動きを内視鏡手術で剥がしてあげて翌日からリハビリを開始し早期社会復帰を目指します(図4)(4)

肩関節外来の診療手順

五十肩の病態

肩の筋肉が弱くなっていないか、肩甲骨の動きが正常かどうかを判断し、肩全体の動きをチェックします。肩甲骨の動きは一度よくなっても再び悪くなることがあります。次に痛い場所(圧痛)がどこかも確かめます。五十肩の場合は肩の前にある骨の突起(烏口突起)付近を押すと痛いことが多いです。これはその近くに炎症や癒着の原因(烏口上腕靭帯の肥厚)があることが考えられます。そしてレントゲン検査や場合によりMRI検査やエコー検査を行います。診察だけでも十分肩の痛みの原因がどこにあるかは推察できます。ヒアルロン酸の注射やリハビリテーション治療も効果がなければ、肩関節鏡視下手術により治療を行います(5)。これは全身麻酔ですが1 cm程の傷を4ヵ所程で行い、入院も約3日程で行なっております。治りにくい五十肩の場合は手術後、次の日から肩を動かしてリハビリテーションを行い1ヶ月ほどで、挙がらなかった腕が挙がる様になります(図5)。

五十肩の病態

これは肩の中に赤く充血している炎症があり、ちからこぶを出す筋肉(上腕二頭筋)の腱が癒着して動きにくくなっているので、それを手術により十分剥がすことで治療効果を引き出します(図6)。これにより肩の痛みや夜間痛、手のむくみも改善してきます。これをわずか4 mmの内視鏡を使って治します。また肩の中に腱板といった大事な腱があるので、これに傷がついたりしていると五十肩の夜間痛が治りにくい方がいます。これも同時に関節鏡で縫合します(図6)。しかしこの手術の欠点は術後麻酔からさめると痛いことです。これは次第に軽減しますが鎮痛剤を術後3日ほど内服します。

五十肩の体操

五十肩の最新治療として内視鏡手術が話題になっており、十分なリハビリにて治らない肩の痛い方で腕が上がらない場合には適応があります(5)。しかし、五十肩の予防法として五十肩体操というものがあります。
まず、
1. 痛い腕を垂らして腰をかがめて地面に接するように全身の力を抜いて腕を振り子のように揺り動かす、いわゆる「おじぎ体操」があります(肩甲骨周囲筋のリラクゼーション)。
2. 仰向けに寝て痛い腕を片方の手で支えながらゆっくり頭の上に上げていく体操(挙上運動)
3. 肘を体につけて手のひらを上に向けて「どうぞ」とするように外に回す体操(外旋運動)。
特に大事なのはこの外旋運動が治らないと夜の肩の痛みはとれないことです。

スポーツ外傷による肩痛

野球、バレーボール、水泳、重量挙げなどで肩が痛くなってスポーツができない方は悪化しないうちに早めに診察を受けてください。特に中学、高校野球で肩肘痛がある場合、無理に練習を続けて試合に出場したりしている選手は一度メディカルチェックを受けたほうがいいです。
成長期の肩肘痛は大人と違い、骨の成長障害にも関わりますので注意が必要です。腕を上に振り上げたり、重いものを急激に持ち上げたり、鉄棒に長時間ぶら下がったりしますと上腕二頭筋腱付着部の関節唇がはがれることがあり、ひどくなると肩関節鏡視下手術が必要となります。また、野球のバッターや、転倒して肩にピキッと激痛がはしり肩を横にあげるちからが入りにくい場合は腱板断裂の可能性があります。

放っておくと断裂の穴が大きくなってしまい治りにくいので、MRIやエコーで検査をして、肩痛や筋力低下の症状が続いているならば肩関節鏡視下腱板縫合が必要となります。さらに肩疾患ではとても大事なものに反復性肩関節脱臼があります(図7)。例えば20歳代のスノーボードなどで脱臼した場合8割近くが再び脱臼します。

これは一度肩が脱臼すると抜けやすくなり、いわゆる脱臼の通り道ができてしまうからです(バンカートリージョンといいます)。つまり氷の上を靴で歩いているようなもので、ふと気をぬくと転んでしまう、すなわち脱臼してしまうのです。これを放っておくと変形性肩関節症となって骨にとげができたりして腕が上がらなくなったり、肩の重い痛みが長く続いてしまいます。
これらも十分MRIなどで検査をして必要があれば肩関節鏡視下手術により早めに治したほうがいいです(図7)。当センターでは全国大会出場レベルの選手やオリンピック出場経験者、メジャーリーグ候補野球選手など手術を行なっております。

人工肩関節置換術

肩疾患の治療は内視鏡だけでなく人工関節も近年多く行っております(図8)。関節リウマチや変形性関節症で変形が強く腕が挙げられない場合、特にリウマチでは罹患期間10年以上で関節破壊が強い場合には人工肩関節置換術を行い良好な成績を得ています。 腱板広範囲断裂で1次修復不能な、変形性関節症で70歳以上の場合、リウマチで腱板断裂があり関節破壊が高度な高齢の患者さんにはリバース人工関節置換術を行っております。当科では近年、年間10例以上の人工肩関節置換術を行っております。

肩が痛くて困っているすべてのひとへ

突然肩が痛くなって、あるいはスポーツなどでけがをして肩が痛いなど 多くの肩の患者さんへむけて私からのメッセージです。

  1. まず肩が痛い原因を納得のいくまで説明をうけること
  2. 同じ治療を半年以上おこなって全く効果のない場合は違う選択肢を考えること
  3. 早期診断、早期社会復帰をめざした治療を受けること
  4. 肩にも内視鏡の手術があるので決してあきらめないこと
  5. リバース人工肩関節置換など肩関節手術は進歩していること

最後に我々肩の専門のドクターはまだまだ全国的に少なく、もっともっと肩の病気がよくなるようにこれからも頑張りたいと思います。

  1. 1) Kanbe K, et al. Inducement of mitogen-activated protein (MAP) kinases in frozen shoulder. J Orthopaedic Science 14:56-61, 2009.

  2. 2) 神戸克明, ほか. 腱板断裂に対する鏡視下腱板修復術の治療経験. 肩関節31:393-396,2007. .

  3. 3) 神戸克明 ほか. 肩関節拘縮に対する肩関節鏡視下授動術の臨床評価. 肩関節33:541-545,2009

  4. 4) 神戸克明 ほか.肩関節拘縮に対する肩関節鏡視下授動術における肩峰下除圧術とリハビリテーションの重要性. The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 45: 612-616,2008

  5. 5) 神戸克明 ほか.拘縮肩に対する肩関節鏡視下授動術の治療成績. 肩関節 29:677-680,2005 .

肩関節外来のスタッフ・診察時間

神戸克明(准教授)

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