心臓は一生の間休むことなく働き続ける臓器です。そのため大量の酸素を消費し,それを供給するための大量の血液の供給を必要とします。この血液は,心臓の表面を走行する冠動脈という血管を通じて心臓の筋肉の隅々まで送り込まれます。近年,心筋梗塞や狭心症などのいわゆる冠動脈疾患が増加しています。これは冠動脈の内部が狭くなったり閉塞したりして血液の供給が不十分になることによって発生する疾患ですが,生活習慣の変化によって動脈硬化やメタボリック症候群などの因子が増加しているのが原因と考えられています。
心臓CT検査と心臓カテーテル検査
この検査は動脈にカテーテルを入れるため,ときに合併症が起きることがあります。検査の費用や手間,時間,X線の被曝などの問題もあります。
近年になり,カテーテルを使わなくても冠動脈の画像を撮影することができる心臓CT検査が注目されつつあります。造影剤は腕の静脈から入れるだけですみますし,検査にかかる時間も短く,心臓カテーテル検査に比べて負担が小さいのが特徴です。検査の信頼性もカテーテルとほぼ同程度まで向上しました。冠動脈の内腔の大きさの評価だけでなく,動脈硬化による冠動脈壁の石灰化なども評価できます。
| 心臓CT検査 | 心臓カテーテル検査 | |
| 入院 | 入院不要 (日帰り) | 通常1泊 (術後安静が必要) |
| 造影方法 | 腕の静脈 | 手首または足の動脈 |
| 検査時間 | およそ15分 | およそ2時間弱 |

心臓CT検査で見える冠動脈壁の石灰化が,心臓カテーテル検査では見えない
MDCTの利点
この心臓CT検査の信頼性の向上に貢献したのが,MDCT(multi-detector-row CT)と呼ばれる新しい方式のCT画像診断装置です。従来のCTはX線の検出器が弧状に1列に並んでいるだけでしたが,MDCTではこの検出器が複数列並んでいるため,同時に複数の場所のデータを収集して撮影ができます。同時に複数のデータを集めるため,撮影時間が短くなり,撮影のために息を止めていただく時間も短くなりました。また,これまでよりもより広い範囲のデータを収集することができるようになったので,冠動脈バイパスの術後などの検査で心臓の周囲の血管も同時に評価できるようになりました。MDCTによる心臓の検査の場合,心電図を計測して心臓の動きにあわせながらデータを収集することで,心臓の膨らんでいるとき(拡張期)や縮んでいるとき(収縮期)のデータを一気に得ることができます。冠動脈の評価だけでなく,心臓の容積の変化(駆出率)などの心機能を評価することが可能です。
MDCTはその検出器の数が多いほど高性能となりより細かく大量のデータを収集することができ,楽に検査が終わります。当院では2003年に16列のMDCTを導入して心臓CT 検査などを行ってきましたが,2006年からは世界最高(2007年12月現在)の64列の検出器を持つMDCT(GE社 LightSpeed VCT)を導入し,心臓CT検査に使用しています。

心臓CT検査で見つかった冠動脈の狭窄(黄色矢印)

ステントの治療後,血流が確保されている
被曝低減ソフトウエア
通常のCT装置は撮影している間ずっとX線を出し続けています。当院のMDCT装置に組み込まれたソフトウエアは,心臓の拍動にあわせて必要な瞬間だけX線を発生させるように精密な制御を実現します。これにより,従来のMDCT検査に比べてX線被曝を大幅に低減させることがでるようになりました。
総合的な臨床チームワーク
心臓の冠動脈疾患の診断と治療は心臓CT検査のみでは終わりません。当院では必要に応じて心臓MRI,心臓カテーテル検査などの検査を追加することができます。また,冠動脈の血管内治療(経皮的冠動脈形成術やステント内挿術など)や冠動脈バイパス手術などの治療につなげることができます。現在,心臓CT検査は心臓血管外科と内科,放射線科が連携して行っており,診断と治療が密接に連携した高度な医療を受けることが可能です。
