乳がんの治療法
             

 

乳がんとは  

乳がんの治療には外科治療、放射線治療、抗がん剤治療、ホルモン治療などがありますが、外科治療が原則で他の治療は補助的な治療です。外科治療には乳房をすべて切除する乳房切除術とがんを含めて乳房の一部だけを切除する乳房部分切除術(乳房温存療法)の二通りあります。いずれの場合もわきの下のリンパ節はいっしょに切除しますが、胸の筋肉を切除することはほとんどありません。乳房温存療法の場合には、温存した乳房に放射線をあてることが一般的です。
いずれにしても治療の内容については専門医に詳しく説明してもらうことをお勧めします。


①術前化学療法

Q:術前化学療法って?
 
A:  
乳がんがみつかってもすぐに手術せず、抗がん剤治療を最初に行ってから手術を行う方法です。

Q:術前化学療法のメリットは?
 
A:  
比較的大きなしこりでも、抗がん剤で小さくすることによって、乳房温存療法が可能となる場合があります。また、その抗がん剤がその患者さまの乳がんに対してどの程度有効であるか知ることができます。

Q:術前化学療法のメリットは?
 
A:  
当科での効果(奏効率)は83%で、病理学的に(顕微鏡で見て)がんが完全消失した症例は22.2%でした。また、約50%の症例で乳房温存術が可能になりました。抗がん剤の選択やその投与方法も工夫されてきており、今後はさらに効果が向上すると思われます。
特にHER2陽性乳がんの場合、分子標的薬を併用することによって60%の症例でがんが完全消失しました。



②乳房温存療法
 
乳房温存療法は、がんができた乳腺の部分切除と脇の下のリンパ節を摘出する手術の後に、残した乳房に放射線をあてる治療方法です。このことにより、乳房を残して乳がんを治療することが可能です。また、放射線をあてないで手術のみで治療が終了するケースもあります。  

東京女子医科大学東医療センター外科では約21年前から乳房温存療法に取り組み、さまざまな研究を重ね現在に至っています。現在では全乳がんの78%に乳房温存療法が行われています。

Q:乳房温存療法はどんな患者さんにでもできるの?
    乳房温存療法の適応(どんな患者さんに対して行うか?)
A:   1. しこりの大きさ
原則的に3cm以下がめやすです。それ以上大きなしこりでも、薬物治療でしこりを小さくしてから乳房温存療法を行うことが可能です。 

2. がんの広がり
乳がんは多くの場合、乳管というミルクの通り道に発生してしこりをつくるとともにその道に沿って発育していきます。そのため、しこりの大きさよりも実際には乳がんがより拡がっている場合があり、あまり拡がりが大きいものでは、温存した乳房にがんを残してしまう可能性があり、乳房温存療法には不向きです。

3. がんが多発している場合
片方の乳房にがんが複数個ある場合もやはり乳房温存療法には不向きです。

4. 膠原病や妊娠している方の場合
膠原病や妊娠している方の場合、放射線照射ができないため手術のみ(乳房温存術)で対応することになります。そのためやはり慎重な対応が望まれます。
 

Q:残した乳房の形はどんなふうになるの?
 
A:  
乳房から一部の乳腺組織および脂肪組織を切り取るわけですから、手術する前と全く同じ形を保つことは困難です。しかし、私たちの科では、必要最低限の切除を心がけているため、乳房温存療法後の美容成績も良好です。
「とてもよい(excellent)」「よい (good)」「まあまあ (fair)」「よくない (poor)」の4段階で美容面を評価すると「とてもよい(excellent)」「よい (good)」が87%を占めました。

    乳房温存療法前 乳房温存療法後


Q:乳房温存療法で再発が心配 ・・・
 
A:  
乳房温存療法を行った場合、残した乳房にがんが再発してしまう可能性があります(乳房内再発)。当科では、手術後10年間で乳房内再発を起こす確率は8.8%です。(図)
再発してしまった患者さんの76%は再手術により治療が可能でした。

   
累積健存率グラフ

累積生存率グラフ

Q:乳房温存療法ができなかった患者さんは?
 
A:  
乳房温存療法が適さなかった患者さんにはその患者さんの乳がんの性質などを考慮して、以下のような手術方法があります。
     
   
乳房切除術
   

乳房を切除します。胸の筋肉は切除しないため結果として胸が平らにはなりますがえぐれることはありません。希望によって下記のような再建術をうけることができます。

 
乳房切除術
         
   
乳腺全切除術

乳房すべてを切除せず、乳房の皮膚そして多くの場合乳首も残して、中の乳腺のみをくり貫く手術です。希望によって下記のような再建術をうけることができます。



・乳房再建
  乳房再建  
ご自身の背中あるいはおなかの皮膚と筋肉を使って乳房を再建します。これには、乳房切除するときに同時に行う方法と数カ月から数年後に行う方法があります。



・組織拡張器挿入
  組織拡張剤注入前
組織拡張剤注入前
組織拡張剤注入後
組織拡張剤注入後
Tissue expanderといって、手術のときに生理食塩水が入った袋を皮膚の下あるいは筋肉の下に入れておき、徐々に膨らませていき乳房の膨らみを作る方法。


乳房温存療法ができなかった患者さんにも以上のような乳房再建を積極的に行っております。

 


 
③センチネルリンパ節生検

乳がんの手術では、脇の下のリンパ節をすべて切除することが一般的でした。しかし、後遺症として腕のむくみ(リンパ浮腫)や腕の知覚異常をきたすことがしばしばみられます。転移がない場合にはリンパ節をすべて切除する必要がないため、腋窩リンパ節をすべて切除せずに,その一部分を切除して調べることで情報を得ようという試みがなされるようになりました。


Q:センチネルリンパ節生検って?
 
A:  
センチネルリンパ節というのは、乳がんからのリンパ流が最初に行き着くリンパ節です(図1)。乳がんの手術の際、このリンパ節を調べて,がんの転移がなかったら他のリンパ節にも転移がないだろうと考えられています。センチネルリンパ節生検により,腋窩郭清による後遺症がほとんどなくなるというメリットがあります。また、腋窩にドレーン(リンパ液を排出するためのチューブ)を入れなくてよいため入院期間が短くて済みます。
センチネルリンパ節イラスト
図1. 乳癌におけるセンチネルリンパ節
監督:金沢大学医学部附属病院 手術部助教授 野口昌邦先生
指導:元千葉県がんセンター乳腺外科 現ブレストサービス社(代表)宮内 充先生


Q:センチネルリンパ節生検の方法は?
 
A:  
放射性同位元素(RI)を用いる方法と色素を用いる方法あるいはその両方を用いる方法とがあります。さらに最近では蛍光色素を用いる方法(蛍光法)も行われています。蛍光法とはICGという薬剤に赤外線が当たると蛍光を発する性質を利用してリンパの流れ道を確認してリンパ節を見つける方法です。当院では放射線被曝のない蛍光法・色素法併用によるセンチネルリンパ節生検を行っています。
図2.色素注入 図3.センチネルリンパ節 図4.蛍光色素によるリンパ流の確認
図2.
色素注入
図3.
センチネルリンパ節
図4.
蛍光色素によるリンパ流の確認
    図5.蛍光色素陽性のリンパ節 図4.摘出したセンチネルリンパ節  
    図5.
蛍光色素陽性のリンパ節
図6.
摘出したセンチネルリンパ節


Q:センチネルリンパ節生検の適応は?(どんな患者さまにおこなえるか)
 
A:   しこりの大きさが3cm以下で臨床的にリンパ節転移がみられない患者さまが対象となります。

Q:センチネルリンパ節生検の精度は?
 
A:  
当科における蛍光法・色素法併用による同定率は100% (421例中421例)です。併用法を導入してからの腋窩リンパ節のみの再発例はまだ1例もありません。
 

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